住宅ローン残高をもとに税額控除を受けられる「住宅ローン控除」は、所得税や住民税を直接安くできる税制優遇制度である。控除限度額は、ローンの借入金額や課税所得により変わるため、計算に悩む人も多いだろう。控除額の目安を年収別に紹介する。
年収別の住宅ローン控除額に関するQ&A
住宅ローン控除ってどんな制度?
住宅ローン控除とは、住宅の新築や物件の取得、住んでいる家のリフォームなどを行う際に住宅ローンを利用した場合、消費税や住民税から一部を控除できる制度である。税金から控除額を直接差し引けるため、大きな節税効果が期待できる。
住宅ローン控除とは、住宅の新築や物件の取得、住んでいる家のリフォームなどを行う際に住宅ローンを利用した場合、消費税や住民税から一部を控除できる制度である。税金から控除額を直接差し引けるため、大きな節税効果が期待できる。
控除額の計算方法は?
住宅ローン控除額は、原則として「住宅ローン残高等×1.0%」の計算式で算出される。一般的に、上限額は年間40万円である。控除期間を13年に延長する特例を利用できる場合は、控除上限額の計算方法が2種類になる。
住宅ローン控除額は、原則として「住宅ローン残高等×1.0%」の計算式で算出される。一般的に、上限額は年間40万円である。控除期間を13年に延長する特例を利用できる場合は、控除上限額の計算方法が2種類になる。
住宅ローン控除の概要
●住宅ローン控除とは
住宅の新築・取得・増改築を行うにあたり住宅ローンを組んだ場合に、所得税や住民税から一定額を控除できる制度が「住宅ローン控除」である。「住宅ローン減税」、「リフォーム減税」と呼ばれることもある。正式には「住宅借入金等特別控除」という。
一定の要件を満たし、住宅ローン控除の適用を受けると、毎年12月31日時点でのローン残高の1%相当額を税額から控除できる。所得控除とは異なり、控除額を所得税や住民税から直接差し引く税額控除であるため、大きな節税効果が期待できる。
住宅ローン控除を受けるためには、初年度の確定申告が必須である。確定申告する必要がない給与取得者でも、控除を受けたいなら初年度に必ず確定申告しなければならない。
給与所得者の場合、2年目以降は職場の年末調整で控除の手続きができるようになる。ただし、年収が2,000万円を超える給与所得者や自営業者など、毎年確定申告する必要がある人は、2年目以降も確定申告しなければならない。
●住宅ローン控除を受けるための要件
住宅ローン控除は、主に以下の要件を満たしている場合に利用できる。
・住宅を取得した日から6カ月以内に入居し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること
・床面積が50平方メートル以上かつ、床面積の2分の1以上が自己の居住用であること
・住宅ローンの返済期間が10年以上あること
・控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
・増改築などの場合は工事費が100万円以上であること
親族や知人からの借り入れでは、控除を受けられない。勤務先から借り入れた場合は、金利が年0.2%以上であれば条件を満たす。合計所得金額が3,000万円を超える年は、住宅ローン控除を受けられないことにも注意しよう。
住宅ローン控除額の計算方法
●10年目までの控除額
原則として、年末時点での住宅ローン残高の1%が、10年にわたり所得税から控除される。所得税で控除しきれなかった分は、個人住民税からも控除できる。
一般的な住宅の場合、控除の対象となる住宅ローン残高は最大4,000万円である。残高の1%が所得税から控除されるため、控除限度額は1年あたり40万円となる。
住宅の種類が認定長期優良住宅や認定低炭素住宅の場合は、控除対象となる住宅ローン残高が最大5,000万円に上がるため、控除限度額は1年あたり50万円となる。一般的な中古住宅の場合は最大2,000万円であり、限度額は20万円となる。
なお、住宅ローン控除は、2021年の12月31日までに入居した住宅が対象となる期限付きの制度である。
●11年目以降の控除額
2019年10月1日から2020年12月31日までに居住を開始した場合は、所得税の控除期間が13年まで延長される。対象物件は、消費税10%が適用された物件に限られる。
この拡充措置は、2019年10月1日に、消費税が8%から10%へ引き上げられたことに起因する。 上記の期間に居住開始した場合、10年目までは従来の制度と同様だが、11年目以降は控除限度額の計算方法が以下の2種類に分かれている。
・年末のローン残高等×1%
・(住宅取得等対価の額-消費税)×2%÷3
「住宅取得等対価の額」とは、建物の取得価格を意味し、補助金や住宅取得等資金の贈与額を控除しない金額を指す。一般的な住宅の場合、「年末のローン残高等」と「住宅取得等対価の額-消費税」の上限は、いずれも4,000万円である。
なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響で入居が遅れた場合は、以下の条件を満たすことで、控除期間が13年に延長される特例を利用できる。
・新築なら2020年9月末、中古住宅の取得、増改築等については2020年11月末までに、住宅の取得などに係る契約を締結していること
・2021年12月31日までに入居開始していること
●控除額に余りがあれば住民税からも引く
控除額のうち、所得税から控除しきれなかった分は、個人住民税から控除される。住民税からの控除額の上限は、「前年度における課税所得の7%」か「13万6,500円」の少ないほうと定められている。
所得税の控除期間が13年に延長されるケースでも、住民税からの控除上限額は10年目までと同様である。
住宅ローン控除額の年収別シミュレーション
年収別に控除額を算出する場合、所得を計算するための給与所得控除額を計算する必要がある。2020年分以降の給与所得控除額は、以下のとおりである。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
所得税率は以下のように定められている。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
基礎控除は2020年以降の改正分を使用し、社会保険料控除は年収の約15%として計算する。
また、借入金を3,000万円、金利を年1.5%、返済を元利均等35年(ボーナス払いなし)に設定すると、年末のローン残高と控除額は以下のように概算できる。
年 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2027 | 2028 | 2029 |
残高 | 2,967 | 2,901 | 2,833 | 2,765 | 2,696 | 2,626 | 2,554 | 2,482 | 2,409 | 2,334 |
残高×1% | 29.67 | 29.01 | 28.33 | 27.65 | 26.96 | 26.26 | 25.54 | 24.82 | 24.09 | 23.34 |
年 | 2030 | 2031 | 2032 |
残高 | 2,258 | 2,181 | 2,103 |
残高×1% | 22.58 | 21.81 | 21.03 |
建物購入価格×2%÷3 | 6.66 | 6.66 | 6.66 |
これらの数字を使用し、家族構成が夫婦2人(配偶者が配偶者控除の対象)+子ども1人の場合に、年収別でシミュレーションしたものを紹介する。
●年収400万円
給与収入金額が400万円の場合、課税所得は以下のように計算する。
・給与所得控除額=収入金額400万円×20%+44万円=124万円
・課税所得=給与収入400万円-給与所得控除額124万円-社会保険料控除額60万円(400万円×15%)-配偶者控除38万円-基礎控除48万円=130万円
課税所得130万円の場合、所得税率は5%であるため、所得税は6万5,000円である。復興特別所得税(所得税×2.1%)を加算し、100円未満を切り捨てると、最終的な所得税は以下のように算出される。
・所得税=6万5,000円+1,365円=6万6,365円→6万6,300円
また、住民税は、所得割(住民税の課税所得×10%)と均等割(1人あたり約5,000円)を合算して導き出す。住民税に関しては、配偶者控除額や基礎控除額が所得税と異なるため、以下のように計算する。
・住民税の課税所得=給与収入400万円-給与所得控除額124万円-社会保険料控除額60万円-配偶者控除33万円-基礎控除43万円=140万円
・住民税=140万円×10%+5,000円×3人=15万5,000円
前述の表のとおり、借入金が3,000万円の場合、2020年末の控除額は29万6,700円であり、所得税と住民税から順に控除される。
所得税から控除しきれない分がある場合は、住民税の控除限度額(課税所得の7%)を算出しなければならない。
・住民税の控除限度額=課税所得140万円×7%=9万8,000円
所得税6万6,300円と住民税の控除限度額9万8,000円の合計額は16万4,300円となるため、控除枠を使い切らずに16万4,300円の減税となる。
控除額が6万6,666円となる11~13年目は、所得税6万6,300円がすべて控除され、残りも住民税から差し引けるため、1年あたり6万6,666円の減税となる。
13年間の減税額は、(16万4,300円×10年)+(6万6,666円×3年)=約184万2,998円である。
●年収600万円
年収600万円の場合、所得税は16万5,900円、住民税の控除限度額は13万6,500円となり、10年目まで控除額の全額をそれぞれから控除できる。
11~13年目は、控除額6万6,666円を所得税から全額控除できるため、1年あたりの減税額は6万6,666円となる。
13年間の減税額は、10年間の控除額の合計約265万7,000円+(6万6,666円×3年)=約285万7,000円である。
●年収800万円
年収800万円の場合は、所得税が38万8,400円となるため、13年目まで控除額の全額が所得税から控除される。13年間の減税額も、年収600万円の場合と同じ約285万7,000円である。