配偶者控除,103万円,150万円の壁
(写真=Thinkstock/Getty Images)

総務省の「労働力調査」によれば、2014年の共働き世帯は1077世帯。それに対して夫婦共働きでない世帯は720世帯と下降の一途をたどっており、今後も共働き世帯が増加するのは間違いない状況にある(調査は就業者から農林業及び自営業者、家族従業者を除いた結果)。

勤労意欲を阻んでいる「3つの壁」

社会にこうした構造上の変化が起これば、新たな問題が発生するのはやむを得ない。中でも最近、活発に議論されているのが「配偶者控除」である。配偶者控除とは、共働き夫婦のうち、配偶者の給与収入が年間103万円以下の場合に、主たる生計者の所得から38万円を控除して税負担を軽くする制度のことをいう。

現在、この制度で問題となっているのは、パートタイマーが働く時間を増やしていくと、配偶者控除から外れることによって支払う税金が増え、逆に損をすることがあるという点である。控除から外れる年収ラインのことを俗に「年収の壁」と呼んでいる。パートタイマーの勤労意欲を奪うとされる年収の壁とはどんなものなのか?それは主に3つある。

1.「103万円の壁」

主婦(夫)の年収がこれを超えると、世帯の税負担が増え、会社からの家族手当も付かなくなるケースが多くなる。103万円を超えても、141万円までは収入に応じた特別配偶者控除が適用される。

2.「130万円の壁」

年金などの社会保険で扶養控除が適用となるボーダーライン。パートタイマーが年収130万円を超えると、加入している家族の社会保険から外れ、自前で年金や健康保険の保険料を払わなければならない。

3.「106万円の壁」

2016年10月より新たに導入。厚生年金・社会保険の加入基準が見直され、106万円を超えると、パート先などで保険の加入対象と見なされ、保険料負担が生じる。106万円の壁が適用されるのは、以下の5つの条件を満たした場合である。このうち、1つでも該当しなければ保険加入の対象外となる。

(1) 週の労働時間が20時間以上
(2) 1年以上働く見込みがある
(3) 学生ではない
(4) 従業員501人以上の会社に勤めている
(5) 月収が8万8000円以上ある(年収106万円以上。実際は月収で判断され、残業代や交通費等は含まれない)

これまで、厚生年金は「週30時間以上」が加入要件となっていたが、それが「週20時間以上」と「月収8万8000円以上」に変更されたものである。

減税する政府の「真意」 高所得者の狙いうち

政府は現在、配偶者控除を現行の「103万円以下」から「150万円以下」に適用範囲を広げる方向で検討に入っている。12月に平成29年度税制大綱としてまとめる模様である。

もともと厳しい財政を考えた場合、国は税収を上げたいのが本音のはずである。では、なぜ逆に減税の年収要件を広げようとしているのだろうか。実は、この改正による政府の狙いは2つあると考える。1つは「配偶者控除が適用されるサラリーマンの所得年収に制限を設ける」こと。もう1つは「パート労働者にもっと働いてもらう」ことである。

1つ目の「サラリーマンの所得年収に制限を設ける」についてだが、実は現行の配偶者控除にはサラリーマンの年収制限がない。だから年収が上がれば上がるほど税金が安くなっている。たとえば、会社員の夫と年収103万円以下の主婦、大学生と高校生の子供2人の世帯で試算した場合、所得税配偶者控除で減税される金額は、夫の年収が1000万円で年間約8万円、700万円で約7万円、500万円で約4万円となっている。

国の苦しい台所事情を考慮するなら、税金はお金があるところから多く徴収する以外にない。一見、減税しているように見せかけて、政府の本当の狙いとは、高所得者層を減税対象から外すことである。

「配偶者控除」はいずれなくなる

もう1つの「パート労働者にもっと働いてもらう」ことについてだが、これは社会的な構造上、これからますます労働力が不足することは目に見えているからである。国としては、まずはパートタイマーにも長時間働くことに慣れてもらい、その後、徐々に税収を上げていこうというのであろう。いずれにしろ配偶者控除とは昔につくられた制度であり、今の時代にマッチしているといえないことは明らかである。

こうした流れの中で、我々が取るべき道とは、年収を抑えようとするよりも、むしろ増やすことである。

たとえば時給1000円の人が年収103万円を稼ぐためには、週3日で1日7時間ほど働かなければならず、それを141万円に上げるためには、1日7時間労働を週4日にしなければならない。多くの人は働ける時間に限りがあるため、「だったら扶養控除内に収まっておこう」という結論に落ち着いてしまう。

収入を増やすためには、働く時間を延ばそうとするのもひとつの手だが、より良い方法とは「時給を上げる」方法を考えることである。時給1000円の人が時給1500円になれば、週3日で1日7時間労働のままでも年収141万円以上は稼げる。

結局、税金を抑えるだけでは、肝心の収入は増えていかない。収入を増やすためには「長く働こう」と思うのではなく、たとえ短時間であっても、より多くの価値を生み出す方法を考えることである。正社員だろうとパートだろうと、労働形態と生み出す「価値」の間には、何の関連性もないのである。

俣野成敏 (またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。

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