年末調整や確定申告の時期になると、「所得税」について考える人も多いのではないか。

自分の収入で課税対象になる範囲はどこまでなのか。宝くじや競馬の払戻金、オークションサイトの転売収入などは課税されるのか、非課税になるのか。混同しやすい所得税と住民税の違いについても解説する。

所得税・非課税に関するQ&A

所得税,非課税
(画像=PIXTA)
Q


非課税所得って何?

原則として納税義務者のすべての所得は課税されることになっているが、社会政策の見地や課税技術上の要請から「儲け」とはみなされず、所得税が課されない特定の所得がある。これを非課税所得という。非課税所得は所得税法や租税特別措置法、健康保険法、当せん金付証票法など、さまざまな法律で規定されている。

原則として納税義務者のすべての所得は課税されることになっているが、社会政策の見地や課税技術上の要請から「儲け」とはみなされず、所得税が課されない特定の所得がある。これを非課税所得という。非課税所得は所得税法や租税特別措置法、健康保険法、当せん金付証票法など、さまざまな法律で規定されている。


Q


非課税所得にはどんなものがある?

具体的なものとしては、給与所得者の通勤手当や出張旅費・転勤旅費、遺族恩給や遺族年金、交通事故などで得られる損害保険金や賠償金、雇用保険や健康保険などの保険給付、生活保護費などが挙げられる。

具体的なものとしては、給与所得者の通勤手当や出張旅費・転勤旅費、遺族恩給や遺族年金、交通事故などで得られる損害保険金や賠償金、雇用保険や健康保険などの保険給付、生活保護費などが挙げられる。


Q


非課税所得は申告が必要?

非課税所得は所得の計算から除外されているので、非課税の適用を受けるためや、非課税であることを証明するための手続きは必要ない。また、確定申告をする必要もない。

非課税所得は所得の計算から除外されているので、非課税の適用を受けるためや、非課税であることを証明するための手続きは必要ない。また、確定申告をする必要もない。

所得税とは

税法では、収入から必要経費を差し引いた金額、つまり「儲け」の部分を所得と呼ぶ。そして、1月1日から12月31日までの1暦年の間に得た所得に課されるのが所得税である。

所得は、給与所得、事業所得、利子所得、配当所得、不動産所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類に分類されており、所得税法ではそれぞれの所得の内容と計算方法が定められている。

所得税の計算方法

所得税は以下のような手順で求められる。

①収入から経費を引いて所得を出す。サラリーマンの場合は給与所得控除を引く
②所得から所得控除を引いて課税所得金額を出す
③課税所得金額に応じた税率をかけ、そこから控除額を引いて所得税額を出す
④所得税額から税額控除を引いて基準所得税額を出す
⑤基準所得税額0.021をかけて復興特別所得税額を出す
⑥基準所得税額と復興特別所得税額を足し、そこから外国税額控除と所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額を引く

●14種類の所得控除

所得控除には社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寡婦・寡夫控除、勤労学生控除、障害者控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除、雑損控除、医療費控除、寄付金控除の14種類がある。

会社員には給与所得控除があり、その額は年間の収入額によって以下のように定められている。

 年間収入額  給与所得控除
 162万5000円まで  55万円
 162万5001円から180万円まで  収入金額×40%-10万円
 180万円1円から360万円まで  収入金額×30%+8万円
 360万1円から660万円まで  収入金額×20%+44万円
 660万1円から850万円まで  収入金額×10%+110万円
 850万1円以上  195万円(上限)

●所得税額の計算には速算表を活用

所得税率は段階的に高くなる超過累進税率方式を採用しており、税率は課税所得の金額に応じて5%から45%となっている。計算方法は複雑だが、所得税の速算表を参考に、課税される所得金額に税率をかけ、そこから控除額を引くことで所得税額を簡単に求めることができる。

●税額控除

所得税額から差し引かれる税額控除には、配当控除や住宅借入金等特別控除、政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除、公益社団法人等寄附金特別控除、住宅耐震改修特別控除、住宅特定回収特別税額控除、認定住宅新築等特別税額控除などがある。

●2.1%の復興特別所得税も加算

2013年度から2037年度までは、東日本大震災の復興財源を確保するために創設された復興特別所得税も徴収される。各年の基準所得税額に2.1%をかけた金額が徴収される。

非課税所得とは

上述のとおり、所得は本来、課税されるものだが、「儲け」が存在しないものについては非課税となる。主な非課税所得は、次のように分類される。

●利子や配当に関する所得

・障害者等の少額預金の利子
・勤労者の財産形成住宅や財産形成年金貯蓄等の利子
・納税準備預金の利子
・オープン型証券投資信託の特別分配金
・NISAやジュニアNISAの配当

●給与所得や公的年金に関する所得

・給与所得者に支給される通勤手当や旅費
・職務遂行上必要な現物給与
・国外勤務者の在外手当
・外国政府や国際機関等の勤務者が受け取る給与所得
・文化功労者年金法の規定による年金
・税制適格ストック・オプションによる経済的利益

●譲渡による所得

・生活に必要な動産の譲渡による所得
・資力喪失の際の強制換価手続による譲渡による所得
・NISAやジュニアNISAの譲渡所得
・国や地方公共団体に財産を寄付した際の譲渡所得

●その他

・内廷費や皇族費
・財団法人日本オリンピック委員会等からオリンピック、パラリンピックの成績優秀者に交付される金品
・ノーベル賞として交付される金品
・宝くじの当せん金やスポーツ振興投票(toto)の払戻金
・学資金や扶養義務を履行するために給付される金品
・相続や個人贈与で取得するもの
・心身への損害や突発的な事故で資産に加えられた損害に基づいて取得する保険金や損害賠償金、慰謝料
・公職選挙候補者が選挙運動に関して取得する金銭
・生活保護のための給付金

宝くじの当せん金は非課税、競馬の払戻金は課税対象

非課税所得の「その他」にあるように、数億円を得ることもある宝くじやtotoの当せん金、払戻金は非課税となる。1000万スウェーデン・クローナ(約1億2000万円)と高額 なノーベル賞の賞金や、オリンピックやパラリンピックのメダリストに授与される報奨金なども課税されない。

一方で、競馬や競輪など公営競技の払戻金は「一時所得」に分類され、課税対象となるので注意が必要だ。

転売は非課税となるのか

オークションサイトや転売サイトに出品し、売却して得た収入は課税されるのだろうか。これは出品物の内容で決まる。出品物が生活用動産であれば、売却で得た収入は非課税となる。生活用動産とは日常生活で使用していて、移動することが可能な物品を指す。洋服や家具、家電などが該当し、30万円以下の貴金属や骨董品、美術品なども含まれる。

一方、1個または1組の売却額が30万円を超える貴金属や絵画、美術品の売却で得た収入は譲渡所得とみなされ、課税対象となる。ただし、譲渡所得には50万円の特別控除があるため、年間の譲渡所得が50万円を超えなければ課税対象とはならない。

また、最初から転売を目的としている場合、売却益は事業所得や雑所得とみなされ、課税対象となる。出品物が生活用動産であっても、定期的に出品したり、数が多かったりしていて転売が営利目的だと判断された場合は課税対象となる。

所得税が非課税となる世帯とは

所得がある場合は原則として所得税を納めなければならないが、給与所得者の場合、年間の世帯収入が103万円以下の場合は非課税世帯となり、所得税を納める必要はない。

●基礎控除と給与所得控除の合計が103万円

課税される所得は、収入から所得控除を差し引いた差額となるが、基礎控除が48万円、給与所得控除が最低55万円なので、合計額103万円を超えない収入なら、所得税がかからない。

配偶者や子どもなどの扶養家族がパートやアルバイトをする場合、年収が103万円以下でほかに所得がなければ所得税は非課税となる。また、配偶者のパート収入が103万円以下であれば、納税者本人は配偶者控除を受けることができる。

●家族の人数で非課税対象額は異なる

配偶者がいる給与所得者の場合、上述の103万円に配偶者控除38万円が加わり、141万円までは所得税が非課税となる。また、シングルマザーやシングルファザーの場合は2020年度から適応されることになったひとり親控除(35万円)が受けられることになり、世帯年収138万円までが所得税非課税の対象となる。

所得税と間違いやすい住民税

所得税と同様、所得に基づいて金額が算出され、納めなければならないものに住民税がある。ある年の1月1日時点で居住地がある自治体(都道府県や市区町村)が課税するもので、1月1日から12月31までの所得に応じて、翌年6月から翌々年の5月にかけて納付する。

また、住民税は都道府県に収める都道府県民税と市区町村に収める市区町村民税に分かれている。

所得割と均等割の違いとは

住民税には所得割と均等割がある。所得割は所得税と同様、前年度の所得額に応じて納付金額が変化する。超過累進税率方式を採用している所得税とは異なり、一律10%で計算される。割合は都道府県民税が4%、市区町村民税が6%となっている。

一方、均等割は所得の金額に関係なく一律で課される。従来は都道府県の均等割額が1000円、市区町村の均等割額が3000円で合計4000円だったが、2014年度から2023年度までは、「東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源の確保に係る地方税の臨時特例に関する法律」の施行に伴い、それぞれ500円ずつ上乗せして都道府県の均等割額が1500円、市区町村の均等割額が3500円の合計5000円が課される。

住民税非課税世帯とは

所得税と同様、住民税が非課税となるケースもあり、住民税が課されない世帯のことを住民税非課税世帯と呼ぶ。所得割と均等割にそれぞれ非課税となる条件があり、世帯の構成員全員がそれらの条件に当てはまる場合、その世帯が住民税非課税世帯となる。

●所得割が非課税になる条件とは

所得割は、年間所得が35万円以下であれば非課税となる。控除対象となる配偶者や扶養家族がいる場合は、所得金額が「35万円×世帯人数+32万円」以下になれば非課税となる。

●均等割が非課税になる条件とは

均等割も所得割と同様、年間所得が35万円以下なら非課税となる。控除対象となる配偶者や扶養家族がいる場合は、所得金額が「35万円×世帯人数+21万円」以下なら非課税だ。条件がより厳しい均等割の基準を満たせば、自動的に所得割も非課税となる。

生活保護を受けている場合や、障害者・未成年者・寡婦(寡夫)で前年度の合計所得が125万円以下の場合は所得割、均等割ともに非課税となる。

住民税非課税世帯が受けられる優遇措置

住民税非課税世帯になると、以下のような優遇措置を受けることができる。

・国民健康保険料の減免……所得額に応じて2割から7割減免
・高額医療費の負担軽減……減額が受けられる自己負担分の上限額が下がる
・NHK受信料の免除……住民税非課税世帯で、かつ障害者手帳の所有者がいれば全額免除
・教育費の免除……0歳から2歳までの子どもの保育料が無料
・高等教育の修学支援……大学等の授業料減免が受けられる
・予防接種、がん検診の無償化……インフルエンザなどの予防接種、がん検診が無料

2020年度から高等教育の修学支援制度がスタートし、大学や短大、高等専門学校、専門学校での授業料の減免や給付型奨学金の支援が受けられるようになった。

新型コロナウイルス流行拡大の影響で収入減や失業という事態に直面した家庭は、一時的に住民税非課税世帯に該当する可能性がある。これまで該当していなかったとしても、改めて確認する必要があるだろう。