確定申告の時期になった。国民健康保険料を申告し、控除を受けようとする人もいるだろう。国民健康保険料はちょっとした点に注意すると節税効果が高くなる。今回は、国民健康保険料の確定申告で押さえるべきポイントを解説する。

鈴木 まゆ子
鈴木 まゆ子(すずき・まゆこ)
税理士・税務ライター。税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。

確定申告と国民健康保険に関するQ&A

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(画像=PIXTA)

最初に確定申告と国民健康保険に関する4つの問いに答える。


Q.国民健康保険ってどんな保険?

国民健康保険とは、健康保険・船員保険・共済組合などに加入していない人が対象の公的医療保険だ。自営業者や退職者、転職活動中や失業中の人、年金受給者やその家族が世帯単位で加入する。なお、国民健康保険は主に市区町村に納付する。

国民健康保険とは、健康保険・船員保険・共済組合などに加入していない人が対象の公的医療保険だ。自営業者や退職者、転職活動中や失業中の人、年金受給者やその家族が世帯単位で加入する。なお、国民健康保険は主に市区町村に納付する。



Q.国民健康保険を確定申告するときの項目は?

国民健康保険を確定申告するときは、「社会保険料控除」という所得控除の項目で扱う。所得控除の欄には1月1日から12月31日までの1年間に支払った金額をすべて記載する。この間に支払った国民健康保険料全額が所得から差し引かれることになる。

国民健康保険を確定申告するときは、「社会保険料控除」という所得控除の項目で扱う。所得控除の欄には1月1日から12月31日までの1年間に支払った金額をすべて記載する。この間に支払った国民健康保険料全額が所得から差し引かれることになる。



Q.国民健康保険で控除するとき、添付書類は必要?

確定申告で国民健康保険を申告し、社会保険料控除を受けようとする際、添付書類は不要だ。市区町村など地方自治体が主たる管轄先であるため、調べようとすればすぐに調べられるからだ。ただし、申告書作成のときは納付済証明書に記載された数字を使うか、支払った金額を預金通帳や領収証から集計しなくてはならない。

確定申告で国民健康保険を申告し、社会保険料控除を受けようとする際、添付書類は不要だ。市区町村など地方自治体が主たる管轄先であるため、調べようとすればすぐに調べられるからだ。ただし、申告書作成のときは納付済証明書に記載された数字を使うか、支払った金額を預金通帳や領収証から集計しなくてはならない。



Q.家族分もまとめて申告できるって本当?

国民健康保険料は本人分と家族分をまとめて申告できる。国民健康保険は世帯主が納税義務者だからだ。ただし「実際に支払っていること」が条件となる。妻や子の預貯金口座から引き落としになっていたり、年金から天引きされていたりすると確定申告はできない。したがって、本人が現金でまとめて納めたときだけ可能となる。

国民健康保険料は本人分と家族分をまとめて申告できる。国民健康保険は世帯主が納税義務者だからだ。ただし「実際に支払っていること」が条件となる。妻や子の預貯金口座から引き落としになっていたり、年金から天引きされていたりすると確定申告はできない。したがって、本人が現金でまとめて納めたときだけ可能となる。

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国民健康保険は「社会保険料控除」で差し引ける

国民健康保険は確定申告の際に「社会保険料控除」という項目で合計所得額から差し引くことになる。ここで社会保険料控除の中身と対象となる国民健康保険を見てみよう。

●社会保険料控除とは

社会保険料控除とは、毎月の国民健康保険や国民年金、給与などから天引きされている社会保険料を1年間の合計所得金額から差し引けるという制度だ。主な対象は以下の社会保険料が挙げられる。

 国民健康保険
 国民年金
 健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険で給料や賞与から自己負担分として天引きされるもの
 国民年金基金の掛金
 後期高齢者医療保険

なお、申告できるのは本人分だけではない。一緒に暮らしている家族の分も本人が負担しているのなら申告して控除を受けることができる。

●申告対象となる国民健康保険

確定申告の対象となる国民健康保険は申告する時点の前年の1月1日から12月31日までに実際に払いこんだ金額すべてとなる。2021年3月1日に確定申告をするのなら、2020年の1年間に支払った国民健康保険料が全額所得控除できるわけだ。

なお、国民健康保険は世帯主が納税義務者であるため、配偶者や子どもといった家族の分を支払った場合、控除対象としてまとめて申告できる。ただし、条件があるので、後述する。

国民健康保険を確定申告できる人

●年末調整を受けていない人

自営業や失業中、転職活動中などの理由で年末調整を受けておらず、かつ国民健康保険料を納付している人は対象者となる。1年間に支払った国民健康保険料を確定申告すれば、社会保険料控除として支払った分が所得から差し引かれる。

●年末調整で国民健康保険料の控除をしていない人

勤務先で年末調整を受けた人が対象になることがある。それは年の途中で就職や転職をして、勤め先の会社で年末調整を受けたものの、会社には国民年金保険料を申告していない人だ。

年末調整には会社ごとの期限があるため、後から提出しても会社の総務や経理に受け付けてもらえないことがある。このようなときは自分で確定申告をし、控除を受けるしかない。

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国民健康保険を確定申告するときのポイント

●家族分も一緒に申告できる

一緒に暮らしている家族の分もまとめて申告し、控除を受けられる。妻や夫が専業主婦(夫)だったり、子どもが学生だったりといった理由で国民健康保険を負担できないときは納税義務者である世帯主が負担することになる。

ただし無条件で申告ができるわけではない。社会保険料控除は「実際に負担した本人が控除できる」となっている。そのため、次のような形で納めた家族分の国民健康保険料は世帯主の社会保険料控除に適用できない。

 妻や夫の年金から国民健康保険が天引きされている
 妻や夫、子どもの預貯金口座から国民健康保険が引き落とされている

●添付書類は不要

「国民健康保険も確定申告するなら、国民年金や生命保険と同じように控除証明書が必要なの?」という疑問を持つ人が多い。国民健康保険の確定申告に添付書類は不要だ。というのも、納める先が市区町村であり、金額の把握が容易だからである。

なお、国民年金も以前は添付書類が不要だった。しかし年金未納問題が深刻化し、年金保険料を納めていないにも関わらず控除を受けようとする行為を防ぐため、控除証明書の添付が義務付けられた。

国民健康保険料の金額の確認方法

国民健康保険の支払金額の確認の仕方は次のとおりだ。

●証明書や領収証や通帳で確認

国民健康保険を支払うと、年末に世帯主宛に「納付済額通知書」が届く。自治体ごとに名称が異なるが、ここに年間支払額が記載されている。ただし自治体によっては送付しないところもある。その場合は手元にある領収証や預貯金口座の引落額を集計して確認する。

●わからなければ市区町村で確認

納付済通知書がなく、領収証も手元にない場合、市区町村に連絡してみよう。納付済通知書の再発行を受け付けてくれる。また、電話で納付済額を教えてくれることもあるが、事前に本人確認が必要だ。口頭で伝えられる対象は世帯主か同居の家族だけに限られる。

国民健康保険で節税効果を高めるポイント

国民健康保険の支払額で所得控除が受けられれば、その分納める税金が抑えられる。節税効果をできるだけ高めたいなら次のポイントを押さえよう。

●所得の高いほうでまとめて納付・申告する

所得の高いほうでまとめて納付・申告すると税金は抑えられる。国民健康保険は、自ら実際支払った金額以上の控除を受けることはできない。そのため、パートの妻に無理に国民健康保険を支払わせるよりも、世帯主の夫がまとめて支払ったほうが節税効果は高まる。

なお、節税額は「控除額×税率」となる。年収103万円以下のパートの妻が5万円の国民健康を払っても節税効果はゼロだ。なぜならこの妻の納税額は0円だからである。しかし、所得が多く適用税率が20%の世帯主がこの5万円を負担して確定申告をすれば、「5万円×20%=1万円」分、節税額が増えるのだ。

●1年間の支払額を正しく把握する

年間支払額を正確に把握するというのも節税の上では重要だ。手元にある領収証に不足はないか、抜け漏れを確認しよう。不安なら市区町村に連絡して確認したほうがいい。

申告期間と納税・還付の方法

確定申告の期間は原則、国民健康保険を支払った年の翌年2月16日から3月15日までだ。ただし、それぞれの日が土日祝日と重なるときは次の最初の平日となる。なお、還付申告は年明けすぐから5年間確定申告ができる。

納税と還付とでは次のように手続きが異なる。

●納税の場合

国民健康保険以外に所得があり、計算の結果、納税となれば、申告期限の3月15日までに納税しなくてはならない。納税は税務署や金融機関で現金納付するほか、電子納税・振替納税・コンビニ納付(納税額30万円以下)・クレジットカード納付(納税額1000万円未満)が利用できる。

●還付の場合

還付のときは確定申告書第一表の還付先口座の記入欄に受取人の預貯金口座や名義を記載する。申告した本人以外の口座は還付先として指定できないので注意しよう。還付されるのは通常、申告後1ヵ月から1ヵ月半後だ。e-Taxで申告すると2~3週間程度で振りこまれる。

注意点

国民健康保険で確定申告するときは次の点に注意しよう。

●還付申告が遅くなると住民税で節税できない

還付の確定申告は年明け1月1日から5年間有効だ。だからといってあまり遅れて申告すると、住民税で節税ができない。所得税の確定申告書の情報は、3月16日以降、各市区町村に送られ、住民税の計算の基となるからだ。できるだけ3月15日までに申告しよう。

●間違いがあったらやり直しを

年末調整や確定申告で控除した国民健康保険料の金額を後から確認したら間違えていた、ということがたまにある。このようなときは速やかに確定申告をやり直そう。

申告期限前であれば、多すぎたケースも少なすぎたケースも「訂正申告」と赤字で正しい確定申告書に記載し、間違えた確定申告書を添付して提出すればいい。

なお、申告期限後になってしまった場合、追加納税になるなら「修正申告」を、還付額が増えるなら「更正の請求」を行うことになる。


社会保険料控除は仕組みさえわかれば比較的簡単に利用できる制度だが、税金を節約できる制度は他にも数多くある。しかし本業の忙しい方などにとっては、そうした方法をいちいち調べて実行するのは手間に合わないと感じることもあるだろう。

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