初めて確定申告を行うときに迷うのは、確定申告のやり方ではないだろうか。確定申告は、書類の作成と提出のやり方について、いくつかの方法がある。この記事では確定申告のやり方について、作成方法と提出方法、確定申告の基本手順など、初めて確定申告をする人でも比較的簡単に確定申告ができる方法について解説する。

中村太郎
中村太郎
中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

確定申告のやり方に関するQ&A

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(画像=PIXTA)
Q


確定申告とは?

確定申告とは、個人の1年間の所得を申告し、所得税を納めるための手続きである。申告しなければならない所得がある人は、毎年3月15日までに税務署に確定申告書を提出し、納税しなければならない。

確定申告とは、個人の1年間の所得を申告し、所得税を納めるための手続きである。申告しなければならない所得がある人は、毎年3月15日までに税務署に確定申告書を提出し、納税しなければならない。


Q


確定申告書の作成方法と申告方法は?

確定申告書の作成方法には、手書きで作成する方法のほか、パソコンやスマートフォン、タブレットを使ってデータ入力によって作成する方法がある。

申告方法には、書類で提出する方法とデータで提出する方法があり、書類提出であれば税務署の窓口に持参する方法や郵送する方法、データ提出であればe-Taxを使った電子申告による方法がある。

手書きで作成したものを電子申告で送付することはできないが、データで作成した確定申告書は、印刷して提出することもできる。

   手書き作成  データ入力による作成
 窓口持参  ◯  ○(印刷すれば可)
 郵送  ◯  ○(印刷すれば可)
 電子申告  ×  ◯(事前準備あり)

確定申告書の作成方法には、手書きで作成する方法のほか、パソコンやスマートフォン、タブレットを使ってデータ入力によって作成する方法がある。

申告方法には、書類で提出する方法とデータで提出する方法があり、書類提出であれば税務署の窓口に持参する方法や郵送する方法、データ提出であればe-Taxを使った電子申告による方法がある。

手書きで作成したものを電子申告で送付することはできないが、データで作成した確定申告書は、印刷して提出することもできる。

   手書き作成  データ入力による作成
 窓口持参  ◯  ○(印刷すれば可)
 郵送  ◯  ○(印刷すれば可)
 電子申告  ×  ◯(事前準備あり)


Q


確定申告における納税方法とは?

納税方法は、以下の方法がある。

・窓口納付
・コンビニ納付(納税額が30万円以下の場合のみ可)
・振替納税
・クレジットカード納付
・電子納税

納税方法は、以下の方法がある。

・窓口納付
・コンビニ納付(納税額が30万円以下の場合のみ可)
・振替納税
・クレジットカード納付
・電子納税

確定申告の手順

確定申告の基本的な手順は次のとおりである。

1:確定申告の必要性を判断する
2:書類を準備する
3:確定申告書を作成する
4:確定申告書を提出する
5:納税する

●手順1:確定申告の必要性を判断する

確定申告をしなければならないかどうかは、所得によって変わってくる。また、確定申告をする必要がなかったとしても、あえて確定申告をしたほうが得をするケースもある。例えば医療費控除や寄附金控除など、確定申告をしなければ受けられない控除がある場合、これらを申告することで、年末調整を受けた会社員などは所得税の還付が受けられる。

●手順2:書類を準備する

確定申告をするには、保険会社などから送られてくる控除証明書や、会社からもらった源泉徴収票などを用意する必要がある。

控除証明書については2020年10月より、マイナポータル連携を活用した一括取得が可能となった。控除証明書をデータで取得することで、必要な数字が確定申告書に自動入力され、従来のように紛失による再発行や入力ミス、計算ミスがなくなるというメリットがある。

このほか、確定申告書を書類で提出する場合は、納税者本人の本人確認書類(個人番号を確認できるものと身元を確認できるもの)を提示するかコピーを添付する必要がある。マイナンバーカードがあれば、その両面をコピーして添付すればよい。マイナンバーカードがなければ、番号通知カードと運転免許証などを組み合わせて提出する。

<確定申告にマイナンバーカードは必要か?>

個人番号は必要だが、マイナンバーカードがなくても確定申告はできる。マイナンバーカードがいらない確定申告の方法は、確定申告書を印刷して書類で提出する方法か、電子申告であればe-Taxを「ID・パスワード方式」で利用する方法をとればよい。

ID・パスワード方式は2020年分の確定申告では利用できるが、マイナンバーカードやICカードリーダーライターが普及するまでの暫定対応とされているため、今後の対応には注意が必要だ。

なお、マイナポータル連携を行うには、マイナンバーカードと電子証明書のパスワード、ICカードリーダーライターが必要になる。(ICカードリーダーライターはマイナンバーカードを読みこめるスマートフォンでも代用可)

●手順3:確定申告書の作成

確定申告書を作成する方法は、手書きで作成する方法と、パソコンやスマートフォン、タブレットを使ってデータで作成する方法がある。

・手書きの場合

国税庁のホームページに掲載されている確定申告の様式を印刷するか、税務署で配布されている様式を取りに行く必要がある。ホームページから印刷するときは、必ず申告する年の様式を選択しよう。

国税庁ホームページ: 確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等

・データ入力の場合

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や、市販の会計ソフトを使用して作成する。「確定申告書等作成コーナー」とは、スマートフォン・タブレット・パソコンのいずれにも対応する国税庁のWeb上のシステムである。

前年のデータを読みこんで作ることもできるので、過去のデータがあればより簡単に確定申告書を作成できる。初めて使う人は、推奨環境があるので事前に以下の「ご利用ガイド」で確認するとよい。2020年分の「確定申告書等作成コーナー」は、2021年1月上旬に公開される予定だ。

国税庁:確定申告書等作成コーナー

●手順4:確定申告書を提出する

提出方法には、書類で提出する方法とデータで提出する方法がある。

・窓口持参

納税地を管轄する税務署(基本的には住所地を管轄する税務署)の窓口に確定申告書を持参する方法である。窓口に提出する場合は、税務署の開庁時間に出向く必要がある。

このとき、窓口に書類を持ちこんだ人物は、番号確認書類と本人確認書類の提示かコピーの添付が求められる。時間内に行けない場合は、税務署の玄関付近に設置された時間外収受ボックスに投函して提出することも可能だ。

・郵送

郵送であれば、「郵便物」か「信書便物」として送付する必要がある。(宅配便、ゆうパック、ゆうメール、ゆうパケットは不可)

・電子申告

国税庁のe-Taxというシステムを使って、確定申告書をデータで提出する方法だ。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成したデータや、e-Tax対応の市販のソフトなどで作成したデータを用いることが一般的だ(一部の添付書類については、PDF形式での提出も認められている)。e-Taxを使うには事前準備が必要だが、どの方法で利用を開始するかで準備のプロセスが異なる。

●手順5:納税する

納税方法には、窓口納付、振替納税、クレジットカード納付、コンビニ納付、電子納税等がある。

・窓口納付

税務署や金融機関に備え付けられた納付書を記載し、窓口で現金納付する方法である。

・コンビニ納付

コンビニの端末で「コンビニ納付用QRコード」を読みこみ、バーコードを出力してレジで現金納付する方法である。QRコードは、「確定申告書等作成コーナー」や「コンビニ納付用QRコード作成専用画面」などから発行できるので、それを紙に印刷するかスマートフォンなどに保存してコンビニに行って支払う。なお30万円以下の納税にのみ対応する方法で、現金納付のみとなる(電子マネーなどは不可)。

・振替納税

あらかじめ指定した口座から振り替えてもらう方法である。初めて利用するときは、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を納期限までに金融機関か税務署に提出する必要がある。振替日は毎年4月20日前後なので、通常の納期限より少しだけゆとりがある。

・クレジットカード納付

「国税クレジットカードお支払いサイト」からクレジットカードで納税する方法である。手軽な納税方法だが、決済手数料が別途発生する。納付や決済手数料は、以下のサイトから確認できる。

国税クレジットカードお支払いサイト(トヨタファイナンス株式会社)

・電子納税

e-Taxを使って納税を行う方法である。事前にe-Taxから届け出をすることで、口座振替によるダイレクト納付や、インターネットバンキングを使った納税を始めることができる。

確定申告書の作成方法

確定申告書の作成の大まかな流れを、具体例で見てみよう。

【例】

年末調整を受けたサラリーマンが医療費控除で還付を受けるために確定申告をする

手書きによる作成を想定し、作成書類と大まかな作成手順を解説する。

<作成する書類> ・確定申告書A(第一表、第二表)※「B」でもよい ・医療費控除の明細書(必要に応じて医療費の通知書を添付)

<用意する書類> ・給与所得の源泉徴収票 ・医療費の領収書や通知書 ・医療費の補てんを受けた場合は、金額がわかるもの

<作成手順> まず、源泉徴収票の「支払金額」と「源泉徴収税額」の金額を確認する。

確定申告

(出典)国税庁ホームページ(赤枠は筆者が付したもの。以下同じ)

上述の「支払金額」と「源泉徴収税額」を確定申告書Aの第二表の所得の内訳(赤枠参照)の「収入金額」と「源泉徴収税額」に、勤務先ごとに転記する。(所得の種類は「給与」)

確定申告

このとき2ヵ所以上で勤務して源泉徴収票を複数からもらっている人は、すべて転記する。 源泉徴収票はまだ使うので、手元に置いておく。

続いて、源泉徴収票の「支払金額」と「給与所得控除後の金額」を確定申告書Aの第一表の「収入金額等」と「所得金額」の給与の欄に転記する(赤枠参照)。

確定申告

その下の「所得から差し引かれる金額」には、所得控除の額を記載する。再び源泉徴収票に戻り、源泉徴収票の所得控除の額を記載する。所得控除は、第二表にも記載欄がある。 「16歳未満の扶養親族」がいるときは、第二表の「住民税に関する事項」に記載することも忘れないようにしよう。

続いて、医療費の領収書や通知書から「医療費控除の明細書」を作成する。

確定申告

保険者が発行した医療費の通知書を添付する場合、項目1にその合計額のみ記載すればよい。通知書がなければ1つ1つの領収書の内容を、項目2に記載する。

医療費には公共交通機関の運賃や医師の送迎費なども計上できる。社会保険や民間の医療保険などから医療費の補てんとなる給付を受けている場合は、その額を給付の対象となった医療費から差し引く必要がある(例:高額療養費、出産育児一時金、民間保険の手術一時金など)。

このほか「医療費控除の明細書」の詳細は、「確定申告書の作成の手引き」で確認できる。

「医療費控除の明細書」を作成したら、一番下のGの額を、第一表の医療費控除の欄に転記し、源泉徴収票から転記した所得控除と合計する(赤枠参照)。

確定申告

続いて、確定申告書第一表の右半分に移り、所得税と復興特別所得税を計算する。ここからは具体的な数字で見ていこう。

仮に給与所得が400万円、所得控除額の合計が150万円であれば、第一表の「課税される所得金額」は250万円(1000円未満切り捨て)、それに「対する税額」は15万2500円となる。

所得税額は、以下の速算表を使用して計算する。

<所得税の速算表>

 課税される所得金額  税率  控除額
 195万円未満  5%  0円
 195万円以上~330万円未満  10%  9万7500円
 330万円以上~695万円未満  20%  42万7500円
 695万円以上~900万円未満  23%  63万6000円
 900万円以上~1800万円未満  33%  153万6000円
 1800万円以上~4000万円未満  40%  279万6000円
 4000万円以上  45%  479万6000円

国税庁ホームページ:所得税の税率

「課税される所得金額」が250万円のときは、以下のように計算する。

<計算例>
250万円×10%-9万7500円=15万2500円

これに復興特別所得税(所得税額の2.1%)をプラスする。

<計算例>
15万2500円×2.1%=3202円

よって「復興特別所得税額」に3202円を記入する。

続いて、第二表の「源泉徴収税額の合計額」を第一表の「源泉徴収税額」に転記し、所得税及び復興特別所得税の額(15万2500円+3202円)から差し引く。医療費控除によって源泉徴収税額よりも税額が少なくなるはずなので、その差額が還付される税額となる。

例えば、源泉徴収税額が20万円だった場合、還付される税額は4万4298円となる。

<計算例>
(15万2500円+3202円)-20万円=4万4298円

4万4298円は、第一表の「還付される税額」に記載する。還付金があるので、第一表の右下に、還付金の振り込み口座を記載する。

確定申告の簡単なやり方

確定申告をより簡単に済ませたい人におすすめの申告書の作成方法と提出方法をまとめた。

●スマホやパソコンでの作成がおすすめ

確定申告書の作成は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」などから、スマートフォンやパソコン、タブレットで作成する方法がおすすめだ。

確定申告書の作成を事例で解説したが、確定申告書を手書きで作成しようとすると、第一表・第二表、そして各資料との間で転記を繰り返し、ところどころ電卓での計算も行わなければならない。

スマートフォンやパソコン、タブレットで作成すれば、入力項目に沿って進めるだけで確定申告書が完成する。控除額や税額を自動計算してくれるので計算ミスもなくなる。加えて、法改正にも対応しているため、改正前の控除額を書いてしまうといったミスも防げるだろう。

スマートフォンであれば、「スマート申告」を利用するとよい。「スマート申告」は「確定申告書等作成コーナー」をスマートフォン版に見やすくしたもので、画面をスクロールしながら必要な項目を入力できる。スマート申告に対応する所得や控除は以下のとおりだ。

<スマート申告で入力できる項目>

・給与所得、雑所得(公的年金等)、雑所得(その他)、一時所得
・すべての所得控除(医療費控除、寄附金控除以外も可)
・税額控除 政党等寄附金等特別控除、災害減免額
・その他 予定納税や繰越損失のある人にも対応

スマート申告に対応していない事業所得や不動産所得、山林所得、譲渡所得などがある人は「確定申告書等作成コーナー」を使うとよい。スマート申告の操作手順は、国税庁のホームページで公開されている。

国税庁ホームページ「スマートフォン×マイナンバーカードでe-Tax!進化するスマート申告!

スマートフォンでの申告書入力の画面の流れ【共通】

●帳簿の付け方がわからないときは白色申告の検討も

事業所得や不動産所得、山林所得のある人のうち、とにかく簡単に、決算から確定申告を済ませたいなら、青色申告ではなく「白色申告」という選択肢があることを知っておいて損はない。

白色申告であれば、1つ1つの取引ではなく、日々の合計をまとめて記載することが認められる。確定申告書には「収支内訳書」という書類を添付すればよい。

ただし、青色申告のような税制上の特典がないうえ、帳簿や書類(納品書、請求書、領収書など)は一定期間保存が必要であるなど、記帳以外の負担はそれほど変わらない。

可能であれば青色申告をおすすめするが、1つ1つの取引ごとに記帳をする時間がないというときは、白色申告を選択肢に入れてもいいだろう。

なお誤解されやすいが、青色申告は必ずしも複式簿記でなければならないものではない。簡易帳簿での記帳や、小規模事業者(前々年の事業所得と不動産所得の合計額が300万円以下)が届け出をすれば、現金主義による記帳でも青色申告は行うことができる(ただし青色申告特別控除は10万円になる)。

●確定申告が難しいときは税理士に依頼を

確定申告が難しいときは、費用はかかるが税理士に作成を依頼する手段もある。税理士であれば、事業所得や不動産所得などの決算、確定申告書の作成、申告書の提出まで代行することができる。

電子申告の利用開始の届け出を代わりに提出することもできるので、電子申告を始めたい人にもおすすめである。

まとめ

確定申告のやり方は一つではないため、自身が持っているツールに合わせて、より楽にできるものを選択するとよい。これから毎年確定申告をするという人は、早めに方法を決めて、毎年同じ方法で作成・提出できるようにすると、より効率よく申告できるだろう。