家族や親族を自分の扶養に入れると、所得税だけでなく住民税も軽減される。扶養控除において似た要素を持つ所得税と住民税には、控除額や対象年に違いがあることを押さえておこう。扶養控除となるための条件や、控除額の計算方法を解説する。

住民税の扶養控除に関するQ&A

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(画像=PIXTA)
Q


所得税と住民税の違いは?

所得税と住民税は、どちらも課税所得をもとに税額が算出される税金である。基本となる考え方は同じだが、各種所得控除の金額と、控除を反映する年に違いがある。

所得税と住民税は、どちらも課税所得をもとに税額が算出される税金である。基本となる考え方は同じだが、各種所得控除の金額と、控除を反映する年に違いがある。


Q


扶養控除って何?

扶養控除とは、一定の条件を満たす家族や親族がいる場合、一定金額の所得控除を受けられる制度である。基礎控除や配偶者控除などと同様に、課税所得から控除額を差し引いて税額を計算する。扶養控除の金額が多いほど納税額は安くなる。

扶養控除とは、一定の条件を満たす家族や親族がいる場合、一定金額の所得控除を受けられる制度である。基礎控除や配偶者控除などと同様に、課税所得から控除額を差し引いて税額を計算する。扶養控除の金額が多いほど納税額は安くなる。


Q


住民税の扶養控除を受ける条件は?

扶養控除を受けるには扶養家族がいなければならない。「その年の12月31日現在で16歳以上」、「納税者と生計を一にしている」、「年間の合計所得金額が48万円以下(給与以外の所得がない場合は年収103万円以下)」を満たしている人が扶養家族になれる。

扶養控除を受けるには扶養家族がいなければならない。「その年の12月31日現在で16歳以上」、「納税者と生計を一にしている」、「年間の合計所得金額が48万円以下(給与以外の所得がない場合は年収103万円以下)」を満たしている人が扶養家族になれる。

所得税と住民税の違い

扶養控除は、所得税額と住民税額の根拠となる課税所得に影響を与える要素の一つである。まずは、所得税と住民税の概要と違いを押さえておこう。

扶養控除で住民税も軽減される! 条件や控除額の計算方法を紹介
(画像=ZUU online)

●所得税とは

所得税とは、個人の所得にかかる税金である。1年間で得たすべての所得から、基礎控除や扶養控除、配偶者控除などの所得控除を差し引き、残りの課税所得に税率を掛けて所得税の金額が算出される。

給与所得・退職所得・雑所得など、所得はその性質により10種類に区別され、必要経費の範囲や計算方法などがそれぞれ個別に定められている。

2037年までは、所得税と併せて復興特別所得税を申告・納税しなければならない。復興特別所得税は、基準所得税額に2.1%の税率を掛けて算出する。

●住民税とは

都道府県民税と市町村民税を併せて、一般的に住民税と呼ばれる。1月1日時点で住民票がある住所で課税され、それぞれを合算して納付し、後に分配される。

住民税は、所得額に応じて課税される「所得割」と、所得金額にかかわらず等しく負担する「均等割」で構成されている。

所得割における総合課税分の標準税率は、都道府県と市町村を併せて一律10%である。均等割分の税額は、都道府県が1,500円、市町村が3,500円と定められている。ただし、これらの数値は一般的なものであり、自治体によって数値が異なる場合がある。

●控除額と対象年に違いがある

所得税と住民税の大きな違いの一つに、控除額の差が挙げられる。年間所得から各種所得控除を差し引いて課税所得を計算する点では同じだが、どの種類の控除額も住民税のほうが少ないため、課税所得額は所得税のほうが多くなる。

例えば、所得税の基礎控除額は48万円(2019年分以前は38万円)であるのに対し、住民税の基礎控除額は43万円(2021年度分以前は33万円)である。

ほかにも、所得税の配偶者控除額が最高38万円、一般扶養控除額が38万円であるのに対し、住民税ではそれぞれ最高33万円と、住民税のほうが少なく設定されている。

所得税と住民税が異なる点としては、各種控除を反映する年が違うことも挙げられる。所得税は「その年」の状況で判断するのに対し、住民税はその年の「前年」の状況をもとに計算される。

例えば、2020年の所得は、2020年分の所得税と、2021年分の住民税に反映されることになる。「その年」の収入より「前年」の収入のほうが極端に多ければ、その年に課される所得税に対し、住民税が高く感じるケースもあるだろう。

住民税の扶養控除を受ける条件

扶養控除とは、控除対象扶養親族がいる場合に税金が安くなる制度である。扶養控除の仕組みと、扶養親族の対象となる条件について解説する。

●扶養控除の仕組み

納税者に所得税上の控除対象者となる扶養家族がいる場合、扶養家族の人数に応じて一定額の所得控除が受けられる仕組みを、扶養控除という。金銭的に面倒を見ている家族や親族を抱える納税者について、税負担を減らそうという考え方を反映した制度である。

税制上では、所得税と住民税の算出において、扶養控除の適用を受けられる。なお、一定の要件を満たすことで保険料の免除を受けられる「社会保険上の扶養」も、広義の扶養控除制度に含まれる。

扶養控除の対象になれる人のことを「控除対象扶養親族」という。控除対象扶養親族の人数が多いほど扶養控除額も上がるため、高い節税効果を期待できる。控除対象扶養親族になれる要件については次項で解説する。

会社から給与を受け取っている人が扶養控除を受ける場合、年末調整時に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の必要事項を記入し会社へ提出すれば、ほかに特別な手続きは必要ない。

ただし、中途退職後に再就職する予定がない人など、その年の所得税に関する申告を自分で行わなければならない人は、扶養控除を受けるために確定申告する必要がある。

●扶養控除の対象

控除対象扶養親族にあてはまる人は、その年の12月31日時点で、以下に挙げる条件をすべて満たす人である。

1.配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること
2.納税者と生計を一にしていること
3.年間の合計所得金額が48万円以下(2019年分以前は38万円以下)であること。給与のみの場合は、給与収入が103万円以下であること
4.青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと。または白色申告者の事業専従者でないこと
5.16歳以上であること

2の「生計を一にする」とは、日常生活の資をともにすることをいう。親子3人世帯を夫の収入のみで養っていたり、一緒に生活している両親を子が養っていたりする場合は、生計を一にするものとみなされる。

県外で一人暮らしをする大学生の息子に仕送りすることや、単身赴任先から妻や子どもに生活費を送ることも、生計を一にしている状態である。必ずしも同居を条件とするものではない。

●扶養控除額

住民税の扶養控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無などにより、以下のように金額が設定されている。

 年齢  対象者区分  住民税控除額
 16~18歳  一般の控除対象扶養親族  38万円
 19~22歳  特定扶養親族  63万円
 23~69歳  一般の控除対象扶養親族  38万円
 70歳以上  老人扶養親族(同居老親等)  58万円
 70歳以上  老人扶養親族(同居老親等以外)  48万円

特定扶養親族は、大学生や専門学校生を子に持つ親に配慮し、設けられた年齢区分である。老人扶養親族でも、高齢の親を持つ子の税負担を減らすために、一般と比べて控除額が上乗せされている。

同居老親等に関しては、住宅型有料老人ホームなどに住んでいる場合は、同居していないため対象とならない。ただし、1年以上の入院などによる長期不在は同居とみなされる。

15歳以下でも扶養親族自体にはなり得るが、住民税や所得税の控除対象扶養親族にはなれないことに注意しよう。上限に関しては設定されておらず、70歳を過ぎて何歳になっても、老人扶養親族として扶養に入れられる。

扶養控除の適用を受けた住民税の計算方法

年間所得が500万円のケースで、扶養控除がない場合と1人分の扶養控除がある場合の住民税を計算する。どのくらい差が付くのかを比較してみよう。

●扶養控除がない場合

住民税は、年間所得から基礎控除と所得控除を差し引き、税率を掛けて算出する。扶養控除がない場合を計算するため、基礎控除以外の所得控除が全くないものとして計算する。税率は、全国的なおおよその平均値とされる10%を便宜的に用いる。

所得金額500万円-基礎控除額33万円=課税所得467万円
課税所得467万円×住民税率10%=住民税46万7,000円

●1人分の扶養控除がある場合

基礎控除以外の所得控除が扶養控除しかないケースを想定し、ほかの数値は前項と同じもので計算すると以下のようになる。(扶養控除の対象は一般扶養親族とする)

所得金額500万円-基礎控除額33万円-扶養控除額33万円=課税所得434万円
課税所得434万円×住民税率10%=住民税43万4,000円

扶養控除がない場合に比べ、住民税が年間で3万3,000円安くなることがわかる。このように、扶養控除が適用されれば、税負担を軽減することが可能である。

住民税をシミュレーションしてみよう

住民税の計算は非常に複雑であり、自力で正確に計算するのは困難を極めるだろう。自分の住民税がどのくらいか知りたい場合は、住民税の自動計算サイトを使うのが便利だ。

●自治体別の自動計算サイトが便利

住民税を算出したい場合は、「住民税の自動計算サイト」を活用しよう。全国の市町村に対応しており、生年月日や年収などを入力するだけで簡単に住民税を計算できる。

より詳細な金額を算出するために、収入や所得のほか、扶養控除などの各種所得控除や、ふるさと納税などの各種税額控除の数字を事前に用意しておこう。

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