確定申告の医療費控除では、意外と知られていませんが、直接かかった医療費の他に、交通費や一般の医薬品の購入代金も控除対象に含めることができます。

医療費控除の対象と控除するときの注意点

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(写真=everything possible/Shutterstock.com)

医療費控除とは、その年に支払った医療費が10万円を超えた場合、超えた部分を所得から控除できる制度です。申告者自身の医療費だけでなく、生計を一にする親族のために支払った医療費も控除対象として認められます。同居していなかったとしても、収入のない両親の医療費を負担している場合は、控除対象とすることができます。

必ず医療費控除の対象になるのは、社会保険診療に該当する治療です。また、自由診療であっても一般的な治療方法の範囲内であれば、医療費控除の対象となる場合があります。例えば、金やポーセレンを用いた歯の治療は医療費控除の対象となります。他にも、子供の成長のための歯列矯正も医療費控除の対象として認められています。ただし、同じ歯列矯正でも審美目的の場合は対象とはなりません。

また、病院までの公共の交通機関を用いた交通費も医療費控除の対象となります。公共の交通機関の場合、領収書など発行されないことが多いため、受診日の日付と駅名・電車賃等のメモを残しておけば、医療費控除の根拠として認められます。

おむつ使用証明書がある場合のおむつ代や、介助が必要な場合の家政婦さんの付添料なども医療費控除の対象となります。ただし、付添料については親族に支払うものは控除対象にできないため、注意しましょう。一般の薬局で購入した薬でも、治療目的であれば医療費控除の対象とすることができます。風邪を引いた場合の風邪薬や胃薬などを購入した場合は、忘れずに領収書を保管しておきましょう。

医療費控除を適用するときの注意点

医療費控除の対象となるのは、実際に支払った医療費です。治療は年内であったとしても、支払いが翌年になった場合は、医療費控除に含めることはできません。領収書の日付で判断されるため、注意しましょう。

医療費控除は、治療を目的とした場合に適用されます。予防接種や健康診断などの予防に関する項目や、美容整形などの審美目的の医療費、本人都合の差額ベッド代なども対象とはなりません。この他、コンタクトレンズ代やビタミン剤などの健康増進目的の薬代も対象外となります。

公共の交通機関を用いた通院費は医療費控除の対象となりますが、自家用車のガソリン代や駐車料金は認められません。医師や看護師に渡す謝礼金や、付添に対する心付けも医療費控除の対象外です。

医療費控除を適用するときは、保険金などで補てんされた金額を差し引く必要があります。高額療養費制度などで返ってきた療養費はもちろん、一般の生命保険会社から支払われた保険金についても差し引く必要があります。出産にかかわる医療費については、出産育児一時金も差し引く必要があるため、医療費控除を適用する前によく確認しましょう。

セルフメディケーション税制と医療費控除は選択適用

2017(平成29)年1月1日から、セルフメディケーション税制が施行されました。セルフメディケーション税制とは、健康増進や予防のための取り組みを行っている場合、スイッチOTC医薬品を購入するために支払った金額を所得から控除できる仕組みです。医療費控除とセルフメディケーション税制は同時に適用することができません。効果測定をし、有利なほうを適用するようにしましょう。

セルフメディケーション税制の対象となるのは、スイッチOTC医薬品の購入代金です。薬局の領収書にはセルフメディケーション税制の対象となるかどうかが記載されているため、領収書を確認して保管しておくようにしましょう。支払った金額が1万2,000円を超えるとき、超えた部分の金額を所得から控除することができます。

セルフメディケーション税制を適用するためには、人間ドックや健診、予防接種を受けたことを証明する書類が必要になります。健康増進や予防のための取り組みを行っていない場合は、スイッチOTC医薬品の購入代金を控除することはできないため、注意しましょう。(木崎 涼、医療機関専門のファイナンシャル・プランナー/M&Aシニアエキスパート / d.folio