すでに亡くなっている人についても、確定申告が必要な場合がある。「準確定申告」と言い、亡くなった人に代わり、相続人が手続きを行うことになる。ここでは、準確定申告が必要なケース、手続きの方法、そして確定申告との違いなどについて、詳しく説明する。

井上 通夫
井上 通夫
行政書士。大学卒業後、大手信販会社、大手学習塾などに勤務後、福岡市で行政書士事務所を開業。現在、相続・遺言、民事法務(内容証明、契約書、離婚協議書等の作成)、公益法人業務、各種許認可業務など幅広く担当。

準確定申告にまつわるQ&A

準確定申告
(画像=PIXTA)
Q


準確定申告とは何か?

準確定申告とは、生前に所得があった人が亡くなった場合、相続人が代わりに確定申告をすることである。原則として、死亡から4ヵ月以内に手続きを行わなければならない。

準確定申告とは、生前に所得があった人が亡くなった場合、相続人が代わりに確定申告をすることである。原則として、死亡から4ヵ月以内に手続きを行わなければならない。


Q


準確定申告が必要なケースとは?

準確定申告が必要なケースとは、確定申告の必要がある人が亡くなった場合である。つまり、生前に何らかの所得を得ていた人が死亡した場合ということになる。

準確定申告が必要なケースとは、確定申告の必要がある人が亡くなった場合である。つまり、生前に何らかの所得を得ていた人が死亡した場合ということになる。


Q


準確定申告と確定申告の違いは?

準確定申告と確定申告の最も大きな違いは、申告者である。確定申告は本人だが、準確定申告は相続人となる。そのほかにも申告の方法、各控除額の計算方法なども異なる。

準確定申告と確定申告の最も大きな違いは、申告者である。確定申告は本人だが、準確定申告は相続人となる。そのほかにも申告の方法、各控除額の計算方法なども異なる。

準確定申告

個人事業主は、1年間の売り上げと必要経費を計算し、課税される所得額や納めるべき税金を確定申告によって、税務署に申告する。もちろん、すべて本人が手続きを行わなければならない。

仮に個人事業主が亡くなった場合でも、本人が生前に得た所得額を申告する必要がある。本人は亡くなっているから申告することができないので、代わりに相続人が確定申告を行う。これを「準確定申告」と言う。個人事業主だけでなく、年金収入が多い人など、確定申告の必要がある人が亡くなった場合も、準確定申告を行う必要がある。

準確定申告で提出する書類などは、原則として亡くなった人の住所地を管轄する税務署に提出する。

準確定申告が必要なさまざまなケース

準確定申告が必要なケースとしては、まずフリーランスや自営業などの個人事業主で、事業収入がある場合である。売上金額から必要経費を控除した所得額が38万円(基礎控除)以上の場合は、準確定申告をしなければならない。

次に、家や土地の賃貸をして不動産所得がある人、株取引やFXなどで譲渡益が38万円以上ある人も準確定申告が必要である。ただし、自動的に源泉徴収が行われる口座を利用していたり、NISAなどの非課税投資枠内で投資を行ったりした場合は、準確定申告の必要がない。

競馬の払戻金や懸賞で当たった賞金などは一時所得になるので、準確定申告の必要がある。ただし、この一時所得については、「収入を得るために支出した金額+特別控除額(最高50万円)」よりも多くの所得を得た場合に、準確定申告が必要となる。

会社を退職後に退職金を給付され、退職した会社に「退職所得の受給に関する申告書 」を提出していない場合は、準確定申告を行って精算しなければならない。

なお、地震などの災害で、所得税の軽減または免除を受けている場合や、公的年金などの収入が400万円より多い場合も、準確定申告が必要となる。

準確定申告の期限は?

確定申告の期間は、翌年の2月16日から3月15日までとあらかじめ決まっている。しかし、準確定申告の場合、通常の確定申告とは違い、相続の開始があったことを知った日から4ヵ月以内に申告と納税を行わなければならない。

「相続の開始があったことを知った日」とは、やや回りくどい表現だが、準確定申告を本人ではなく、相続人が行うためである。相続人は、必ずしも亡くなった人の情報を即日知る環境にないことも考えられるので、このような基準になっている。

しかし、基本的には確定申告の必要がある人が亡くなった日から4ヵ月以内が期限と考えて差し支えない。この期限内に申告しなかったり、納税しなければならないのに、税金を納めなかったりすれば、加算税や延滞税が課される。

準確定申告に必要な書類は?

●所得税の準確定申告書

通常の確定申告と同じように、申告には「準確定申告書」が必要である。ただし、実際には「準確定申告書」という書式は存在しない。そこで、一般の「確定申告書」を「準確定申告書」として代用する。「確定申告書」の上部に「準確定申告書」と記載すれば問題ない。

●収支内訳書または青色申告決算

亡くなった人が個人事業主の場合は、収支内訳書または青色申告決算書を作成する必要がある。白色申告の場合は収支内訳書、青色申告の場合は青色申告決算書である。

●準確定申告書附表

準確定申告書には、各相続人等の氏名、住所、被相続人との続柄などが記載された附表を添付しなければならない。附表は、国税庁のホームページからダウンロードできる。

●各種控除証明書

通常の確定申告と同じく、準確定申告でも、生命保険料控除、地震保険料控除など、各種の所得控除を受けることができる。したがって、それぞれの控除を示す証明書が必要になる。

生命保険料控除などの証明書は、保険会社などに連絡をして、発行してもらうことになる。準確定申告の期限は、納税者の死亡から4ヵ月以内なので、速やかに証明書を入手しよう。

準確定申告の流れ

●相続人代表の決定

法定相続人が2人以上いる場合は、それぞれの相続人が連署して、1つにまとめた準確定申告を提出するか、相続人が個々で準確定申告書を作成したうえで提出することになる。

準確定申告書を1つにまとめる場合は、全相続人の代表者を決めなければならない。この代表者が、税務署から送付される書類などの受け取り、問い合わせへの対応をする。

申告する内容が異なる事態を防ぐため、相続人が個々で準確定申告書を提出する場合でも、申告内容をほかの相続人に知らせる必要がある。

●必要書類の入手

先ほども説明したように、準確定申告は通常の「確定申告書」を使用する。確定申告書にはAとBがあるが、故人が年金受給者で申告する項目が少ない場合はA、またAの申告書では項目が足りない場合は、Bを使用することになる。A、Bともに、国税庁のホームページから入手できる。

また、個人事業主や、不動産所得がある場合は、収支内訳書・青色申告決算書が必要になり、通常の確定申告で使うものと同じでよい。

ただし、通常の確定申告とは違って、準確定申告のみ必要となる書類がある。「準確定申告書の附表(死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表) 」だ。こちらも国税庁のホームページから入手できる。

準確定申告によって還付金が発生する場合は、相続人の口座に振り込まれる。相続人が2人以上いて、還付金の受け取りを1人に指定するときは、「委任状(準確定申告用)」を提出しなければならない。「委任状」は、税務署で受け取れるほか、国税庁のホームページでも入手できる。

●準確定申告の書類作成

記載方法は、通常の確定申告に準ずることになるが、大きく異なる点は、「確定申告書(第1表)」の氏名欄に「被相続人 ○○○○」と記載することである。また、表題には「準確定申告書」と記入する。さらに「確定申告書(第2表)」の表題も「準確定申告書」に修正しなければならない。

「準確定申告書の付表」、「委任状」を添付する場合は、それぞれの相続人の氏名、住所、マイナンバーなどを記載する。そして、相続人全員が押印しなければならない。

●書類等の提出

準確定申告書の記載、必要書類・資料が入手できたら、税務署に提出する。提出方法は、税務署に持参する、税務署に郵送する、電子申告をする(e-Taxで送る)の3つの方法がある。提出時に必要なものとして、マイナンバーカードなどマイナンバーがわかるもの、ICカードリーダーライター(e-Taxで送る場合)などがある。

電子申告で提出する場合は、相続人が個々で行うことはできず、代表の相続人がまとめて手続きを 行う。この場合、「準確定申告の確認書」も送信しなければならない。確認書は、準確定申告の電子 申告を代表者に委託することを記載したもので、相続人全員が押印する必要がある。 この確認書をPDFにして、電子申告の際に添付する。なお、先ほど説明した「委任状」は、郵送で提 出することになる。

準確定申告の注意点

確定申告と同じく、準確定申告についても、所得控除が受けられる。しかし、準確定申告の場合、それぞれの所得控除の計算方法が、確定申告と異なる。

例えば、医療費・社会保険料・生命保険料・損害保険料・小規模企業共済などの控除は、1年間に支払った金額ではなく、亡くなった年の1月1日から死亡の日までに支払った金額が控除の対象となる。なお、死亡後に支払った医療費については、相続税の費用として計算する。

確定申告では、配偶者控除や扶養控除などを12月31日時点の現況で判断するが、準確定申告では、死亡した時点の現況で判断する。

故人が個人事業主で、生前に青色申告で確定申告をしていた場合、後を継いだ相続人が準確定申告を行い、故人の事業も引き継ぐため、後継者の確定申告も青色申告をすることができると考えがちである。しかし、所得税法においては、故人の青色申告をそのまま引き継ぐことは認められていない。後継者は、自ら開業届や青色申告承認申請書を税務署に提出しなければならない。

また、消費税の課税事業者の場合も、故人の事業を受け継いだ人が、消費税に関係する書類を提出する必要がある。