新築住宅の購入や住まいのリフォームに住宅ローンを利用する場合、所得税や住民税から一定額を控除可能な住宅ローン控除を利用できる。この記事では、初年度に必要な確定申告の方法や必要書類、控除を受ける際のポイントについて解説する。
住宅ローン控除に関わるQ&A
住宅ローン控除って?
住宅ローン控除とは、マイホームの新築・取得または増改築などを行う際、住宅ローンを利用した場合に税額控除を受けられる制度である。年末のローン残高の1%を、所得税や住民税から控除できるため、大きな節税効果が期待できる。
住宅ローン控除とは、マイホームの新築・取得または増改築などを行う際、住宅ローンを利用した場合に税額控除を受けられる制度である。年末のローン残高の1%を、所得税や住民税から控除できるため、大きな節税効果が期待できる。
初年度は何をすればいいの?
住宅ローン控除を受ける場合、初年度は確定申告での控除申請が必須である。住宅の購入やリフォームなどを行った翌年の確定申告時に、必要書類を提出しなければならない。給与所得者なら、2年目以降は職場の年末調整で手続きできる。
住宅ローン控除を受ける場合、初年度は確定申告での控除申請が必須である。住宅の購入やリフォームなどを行った翌年の確定申告時に、必要書類を提出しなければならない。給与所得者なら、2年目以降は職場の年末調整で手続きできる。
確定申告で必要な書類はどんなもの?
初年度の確定申告時に必要となる主な書類は、確定申告書、マイナンバーがわかる書類、住宅借入金等特別控除額の計算証明書、源泉徴収票、土地・家屋の登記事項証明書、不動産売買契約書や工事請負契約書、住宅ローンの年末残高証明書、である。
初年度の確定申告時に必要となる主な書類は、確定申告書、マイナンバーがわかる書類、住宅借入金等特別控除額の計算証明書、源泉徴収票、土地・家屋の登記事項証明書、不動産売買契約書や工事請負契約書、住宅ローンの年末残高証明書、である。
住宅ローン控除とは
●制度の概要
住宅ローン控除とは、マイホームの新築・取得、現在住んでいる家のリフォームを行う際、住宅ローンを組んだ場合に税額控除できる制度である。税法上の正式名称を「住宅借入金等特別控除」といい、国の政策上では「住宅ローン減税」と呼ばれることもある。
一定の条件を満たせば、毎年の年末におけるローン残高の1%相当額を所得税や住民税から控除できる。控除額を税額から直接差し引く税額控除なので、節税効果は大きい。
制度を利用するには、主に以下の要件を満たさなければならない。
・床面積が50㎡以上かつ床面積の2分の1以上の部分が自分の居住用に使われていること
・10年以上にわたり分割して返済する方法となっている一定の借入金または債務があること
店舗や事務所と併用している住宅の場合は、それらの部分も含めて床面積を計算する。また、親や知り合いから住宅購入費用として借り入れをしている場合、控除の対象とはみなされない。
●居住開始時期により控除期間と控除上限額が異なる
住宅ローン控除では、12月31日時点でのローン残高の1%相当額が、その年の所得税から最大40万円、原則として10年間控除される。
所得税から控除しきれなかった分は、前年度の課税所得の7%を上限とし、住民税からも控除できる。
控除期間や控除上限額は、居住開始時期により異なる。居住開始時期が2014年1月以降の早見表を以下に掲載する。
居住開始時期 | 2014年1月~ 2019年9月 |
2019年10月~ 2020年12月 |
2021年1月~ 2021年12月 |
控除期間 | 10年 | 13年 | 10年 |
控除上限額 | 40万円 | 1~10年目は40万円 11~13年目は※1参照 |
40万円 |
※1 2019年10月1日から2020年12月31日までの間に、消費税10%が適用された住宅などを購入した場合は、控除期間が13年となる。11年目~13年目は、「(住宅取得対価額-消費税額)×2%÷3」と「年末残高×1%」のどちらか少ないほうが控除限度額となる。(住宅取得対価額-消費税額)と年末残高は、いずれも4000万円を上限とする。
なお、新型コロナウイルスの影響により、住宅を取得していながら2020年12月31日までに入居開始できなかった場合でも、以下の条件を満たしていれば、2020年12月31日まで入居を開始したものとみなされる。
・新築取得は2020年9月末、中古住宅の取得や増改築は2020年11月末までに、契約を締結していること
・2021年12月31日までに入居を開始していること
住宅ローン控除を受けるには初年度の確定申告が必須
住宅借入金等特別控除の適用を受けるためには、確定申告する必要がない人も、初年度に必ず確定申告しなければならない。必要書類や具体的な手続き方法を解説する。
●確定申告に必要な書類
初年度の確定申告では、主に以下の書類を用意する必要がある。
確定申告書 | 給与所得者で所得の種類が給与所得・雑所得・配当所得・一時所得のみの場合は確定申告書A、それ以外の人は確定申告書B |
マイナンバーがわかる書類 | マイナンバーカード・通知カード・マイナンバー記載の住民票の写し・住民票記載事項証明書 |
住宅借入金等特別控除額の計算証明書 | 税務署または国税庁ホームページから入手可 |
源泉徴収票 | 給与取得者のみ(住宅購入年のものを会社から取り寄せる) |
土地・家屋の登記事項証明書 | 最寄りの法務局出張所で入手 |
不動産売買契約書または工事請負契約書 | 住宅購入やリフォーム施工の契約確認で必要 |
借入金の年末残高証明書 | 住宅ローンの残高が記載されているもの |
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅・一定の耐震基準をクリアしている中古住宅の場合は、それらの特徴を証明する書類が必要となる。
新型コロナウイルスの影響で入居が遅れた場合は、「入居時期に関する申告書兼証明書(控除期間13年間の特例措置用)」も添付しなければならない。
●手続きの具体的な方法
最初に「住宅借入金等特別控除額の計算証明書」を作成する。年末残高証明書や不動産売買契約書などを確認しながら記入していけば、住宅ローン控除額を計算できる。
控除額がわかったら確定申告書に記入し、すべての書類をそろえて住所地を管轄する税務署へ提出すれば、手続きは完了である。
確定申告できる時期は、給与所得者なら住宅購入年の翌年1月~3月15日、毎年確定申告している人は2月16日~3月15日である。
●2年目以降の確定申告は原則不要
給与所得者の場合、2年目以降は会社の年末調整で住宅ローン控除の手続きができる。
税務署から送付される「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を、年末調整時に会社へ提出すればよい。
ただし、年収2000万円超の会社員や個人事業主など、確定申告する必要がある人は、2年目以降も控除申請の確定申告を行わなければならない。
住宅ローン控除を受ける際の注意点
●初年度の確定申告を忘れてしまった場合
住宅ローン控除のための申告は、5年間さかのぼって還付申告することが可能である。したがって、初年度に確定申告を忘れたとしても、その翌年以降に初年度分の還付申告を行えば、控除を受けられる。
初年度に限らず、さかのぼって5年以内に住宅ローン控除の確定申告を行っていない分があれば、まとめて還付申告できる。
ただし、数年分の還付申告をまとめて行う場合、年末残高証明書など年ごとに数値が異なる書類に関しては、それぞれの年の書類を用意しなければならない。
●住宅ローンの借換えにも適用可
金利を下げるなどの理由で住宅ローンを借換えた場合、「新しいローンが当初のローン返済のためのものであることが証明できる」「新しいローンが住宅借入金等特別控除の対象となる要件にあてはまる」の2点を満たせば、新しいローンにも控除を適用できる。
借換え直前における当初の住宅ローン残高が、新たな住宅ローンの借入時の金額以上であった場合は、新たな住宅ローンの年末残高が控除対象となる。
一方、新たな住宅ローンの借入時の金額が、借換え直前における当初の住宅ローン残高より大きい場合は、控除対象額は以下の計算式で算出される。
・新たな住宅ローンの年末残高×(借換え直前における当初の住宅ローン残高÷新たな住宅ローンの借入時の金額)
●ふるさと納税と併用する場合はデメリットも
ふるさと納税とは、任意の自治体に寄付することで税額控除を受けられる制度である。寄付金のうち2000円を除いた部分が、住民税や所得税から控除できるため、大きな節税効果につなげられる。実質負担金2000円で地域の名産品を受け取れることも、ふるさと納税の魅力の一つである。
しかし、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する場合、初年度はどちらも確定申告する必要がある。この場合、ふるさと納税で受けられる控除のメリットが小さくなる可能性があり、実質負担金が増えてしまうことにもなりかねない。
なお、住宅ローン控除の確定申告が原則不要となる2年目以降は、ふるさと納税の控除申請に「ワンストップ特例制度」を利用できる。併用してもそれぞれの控除が干渉し合わなくなるため、ふるさと納税の控除限度額に影響を与えないことがメリットである。
●併用可能な「すまい給付金」もチェックしよう
住宅ローン控除は所得税や住民税から控除する仕組みだが、収入が低いほどこれらの税金は安くなるため、低収入層は控除による十分な恩恵を受けられない。
住宅ローン控除制度の拡充による効果が十分でない低収入層に対し、住宅ローン控除と併用して消費税率引き上げによる負担軽減を図るための制度が「すまい給付金」である。収入によって給付額が変わる仕組みなので、低収入層でも恩恵を受けやすくなっている。
すまい給付金制度は、消費税率が8%となった2014年4月以降に引き渡された住宅から、2021年12月までに引き渡され入居が完了した住宅を対象に実施されている。収入額の目安が775万円以下の人を対象に、最大50万円が給付される。
すまい給付金の給付額は、住宅取得者の収入と不動産登記上の持分割合により決定する。この場合の収入とは、いわゆる額面収入ではなく、都道府県民税の所得割額に基づいて決められるものである。
住宅ローン控除と併用する場合は、それぞれに必要な申請条件や準備すべき書類、申請方法などが異なることに注意しよう。利用する人や建物の状況によっては、併用できない可能性もあるため、事前のチェックが必要である。