ふるさと納税をしている人が高額な医療費を支払った場合、両方の控除は併用可能だ。大きな節税効果につながる可能性もあるので、該当する場合は積極的に申請しよう。この記事では、ふるさと納税の控除と医療費控除を併用するための基礎知識と仕組みについて解説する。

ふるさと納税と医療費控除に関するQ&A

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(画像=PIXTA)
Q


ふるさと納税ってどんな制度?

ふるさと納税とは、任意の自治体を選んで寄付できる制度だ。寄付をすると、お礼の品として自治体から地域の特産品が届けられる。控除申請すれば、寄付金のうち2000円を除くすべての金額が、所得税や住民税から控除される。

ふるさと納税とは、任意の自治体を選んで寄付できる制度だ。寄付をすると、お礼の品として自治体から地域の特産品が届けられる。控除申請すれば、寄付金のうち2000円を除くすべての金額が、所得税や住民税から控除される。


Q


な医療費控除とは何?

1年間に支払った自分や家族の医療費が一定金額を超えた場合、所得控除を受けられる制度だ。一般的に、年間の医療費が10万円を超えると、控除対象になりやすい。特例として、市販薬の購入で控除を受けられる「セルフメディケーション税制」という制度もある。

1年間に支払った自分や家族の医療費が一定金額を超えた場合、所得控除を受けられる制度だ。一般的に、年間の医療費が10万円を超えると、控除対象になりやすい。特例として、市販薬の購入で控除を受けられる「セルフメディケーション税制」という制度もある。


Q


ふるさと納税の控除と医療費控除は併用できる?

ふるさと納税の控除と医療費控除を併用する場合は、確定申告が必須である。医療費控除の適用金額などによっては、ふるさと納税の控除限度額が減少する可能性があることに注意しよう。

ふるさと納税の控除と医療費控除を併用する場合は、確定申告が必須である。医療費控除の適用金額などによっては、ふるさと納税の控除限度額が減少する可能性があることに注意しよう。

ふるさと納税の基礎知識

●寄付により所得控除を受けられる制度

ふるさと納税とは、都道府県や市区町村へ寄付することにより、税額控除を受けられる制度である。生まれ育った故郷や応援したい地域など、自治体を自分で選んで寄付できる。各地の名産品をお礼として受け取れるため、近年利用者が増えている。

ふるさと納税は、「納税に対する意識を高める」「地域へ貢献する」「自治体が取り組みをアピールする」といった意義のもとで誕生した。自治体によっては、寄付金の使い道を寄付者自身が選べるケースもある。

寄付金額のうち、自己負担額2000円を除いたすべての金額が、所得税・住民税からの控除額として扱われる。所得控除ではなく税額控除となるため、大きな節税効果が期待できる。

所得税からの控除は、ふるさと納税を行った年の所得税から控除される。住民税に関しては、翌年度の住民税で控除を受けられる。

ふるさと納税の控除には限度額があり、納税者本人の給与収入と家族構成により異なる。例えば、独身で年収300万円なら限度額の目安は2万8000円、夫婦共働き+高校生の子ども1人で年収600万円なら、限度額の目安は6万9000円である。

自己負担額2000円を除いた全額で控除を受けたい場合は、控除限度額を意識して寄付金を決定することが重要だ。

●手続き方法は2通り

ふるさと納税の寄付金控除を受けるためには、原則として、寄付を行った翌年に確定申告する必要がある。申告の際は、寄付先の自治体が発行する受領書などを添付しなければならない。

確定申告が必要ない給与所得者などで、寄付した自治体数が5団体以内なら、「ワンストップ特例制度」を利用できる。確定申告の面倒な作業が不要で、簡単な手続きで申請できる。

ただし、ワンストップ特例制度は、寄付を行うたびに申請しなければならない。自治体により手続き方法が異なるため、各自治体で確認する必要がある。

所得税と住民税の両方で控除が行われる確定申告と異なり、ワンストップ特例制度では所得税からの控除は行われない。自己負担額を除いた全額分が、翌年度の住民税から減額される形で控除される。

●そのほかに併用できる控除は?

ふるさと納税は、医療費控除や住宅ローン控除との併用が可能である。

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入したり住宅をリフォームしたりする際に、一定の要件を満たせば所得税の控除を受けられる制度である。正式には「住宅借入金等特別控除」と呼ばれ、ふるさと納税の寄付金控除と同様に、大きな節税効果を得られる。

原則として、12月31日時点での住宅ローン残高の1%を、10年間にわたり所得税から控除できる。1年当たりの控除限度額は40万円と定められているため、10年で最大400万円の減税につながる。

老後資金の準備に活用できる年金制度「iDeCo(イデコ)」も、「小規模企業共済等掛金控除」と併用できる。小規模企業共済等掛金控除は所得控除であるため、所得税と住民税の根拠となる課税所得に対して控除を適用できる。

医療費控除の基礎知識

●医療費を一定額以上支払った場合に適用される制度

医療費控除とは、自分や自分と生計をともにする家族などのために1年間に支払った医療費が一定の金額を超えた場合に、所得控除を受けられる制度である。

自分や家族の誰かが入院や手術を行った場合は、それだけで医療費が高額になることも少なくない。しかし、医療費控除の手続きをするだけで税金を安くすることができる。

医療費控除は所得控除の一つで、所得に対して医療費控除を適用した後の課税所得をもとに、所得税や住民税が算出される。

医療費控除の対象となる医療費の条件として、「納税者が自分や養っている家族などのために支払った医療費であること」「その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費であること」の2つが定められている。

●計算方法や手続き方法

医療費控除の金額は、以下の計算式で求められる。最高で200万円と定められている。

・実際に支払った医療費の合計金額-保険金などで補てんされる金額-10万円

10万円を差し引く前に、数字が0になることが多いため、一般的に医療費控除は10万円を超えれば申請できると認識されている。最後の10万円に関しては、その年の総所得金額が200万円未満の人は、総所得金額の5%に置き換えられる。

「保険金などで補てんされる金額」とは、医療保険や健康保険などからの支給金の額を指す。医療保険なら入金・手術給付金、健康保険であれば出産育児一時金・高額療養費・家族療養費が該当する。

医療費控除の申請は、確定申告が必須である。年末調整では申請できないため、例年は確定申告していない給与所得者も、控除を受けたければ確定申告しなければならない。

医療費控除の申請のみで確定申告する場合は、以下の書類が必要である。

・確定申告書A(第一表、第二表)
・医療費控除の明細書
・医療費の領収書
・源泉徴収票

医療費控除の明細書は、2017年の確定申告から添付を求められるようになった。ただし、健康保険の医療費通知を添付すれば提出する必要はない。

また、医療費の領収書は、2017年の確定申告から提出しなくてもよいことになったが、自宅で5年間保存しておく必要がある。

●セルフメディケーション税制は併用不可

セルフメディケーション税制とは、対象となる市販薬(医療用から転用された医薬品)の購入費が年間で1万2000円を超える場合、確定申告することで超過分を所得から控除できる制度である。控除額の上限は8万8000円と定められている。

適切な健康管理のもとで、医療用医薬品からの代替を進める観点から設けられた制度だ。ほとんどの対象製品には共通識別マークが入っており、ドラッグストアなどで購入できる。

利用条件として、対象の医薬品を1万2000円以上購入した年に、予防接種や定期健康診断、特定健康診査など、健康に関する一定の取り組みを行っていることが求められる。それらの領収書や結果通知書も保存しなければならない。

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例と位置付けられ、医療費控除と併用できない点にも注意が必要だ。どちらも申告できる状況であれば、自分にとって適切なほうを選ばなければならない。

ふるさと納税の控除と医療費控除を併用する方法

●確定申告による手続きのみ

ふるさと納税の控除申請方法は、確定申告とワンストップ特例制度の2種類がある。しかし、ワンストップ特例制度は、確定申告する必要のある人は利用できない。

一方、医療費控除は確定申告でしか申請できないため、ふるさと納税と医療費の控除を併用したい場合は、自動的に確定申告しか選択肢が残らないことになる。

医療費控除ではなくセルフメディケーション税制を利用したい場合も、同様に確定申告でしか併用できない。

●ふるさと納税の控除限度額が少なくなることも

医療費控除は所得控除の一種であり、医療費控除が適用されると課税所得額に影響を与える。課税所得額が大きいほど、ふるさと納税の控除限度額も大きくなるため、医療費控除を併用することで、ふるさと納税の控除限度額が少なくなる可能性がある。

ふるさと納税は、実質負担金2000円で地域の特産品を購入できることが魅力だ。控除限度額が少なくなり実質負担金が増えると、結果的に特産品の価値を超える出費をしたことにもなりかねない。

ふるさと納税の控除申請を確定申告で行う場合は、医療費控除以外の控除を併用するケースでも、同様に控除限度額が少なくなる可能性があることを押さえておこう。

●不安な場合はシミュレーションしてみるのがおすすめ

ふるさと納税の控除をほかの控除と併用した場合、限度額がどのくらいになるのかを正確に計算するのは困難を極めるだろう。

限度額に関して不安がある場合は、以下に紹介する「控除上限額シミュレーション」を利用するのがおすすめである。

控除上限額シミュレーション | ふるさと納税 [ふるさとチョイス]

自分と配偶者の給与収入や扶養家族の有無、各種控除額を入力すれば、ふるさと納税の控除上限額の目安がわかる。

小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除・医療費控除・住宅借入金等特別控除額との併用に対応しているので、同時申請できる状況で重宝するだろう。