確定申告の際に関係する「基礎控除」とは何か知っているだろうか?元々は誰でも無条件で所得から一定額を差し引けるものだったが、2020年以降は内容が変わってきている。この記事では、「基礎控除」の詳細や、2020年以降に変更された内容などを確認する。

確定申告の基礎控除に関するQ&A

確定申告,基礎控除額
(画像=PIXTA)

確定申告の基礎控除に関するQ&Aを紹介していこう。

Q


確定申告はなぜ必要なのか?

確定申告をするのは、どれほどの所得があったのかを申告しないと、正しい納税にならないためである。毎年1月1日から12月31日までの所得を計算・申告して、その額に合わせて納税しなければならない。個人事業主やフリーランスなどが確定申告を行うことが多い。源泉徴収などで今までに納めた税金が納め過ぎだった場合、確定申告によって納め過ぎた税金が戻ることもあるので、確定申告を忘れないようにしよう。

確定申告をするのは、どれほどの所得があったのかを申告しないと、正しい納税にならないためである。毎年1月1日から12月31日までの所得を計算・申告して、その額に合わせて納税しなければならない。個人事業主やフリーランスなどが確定申告を行うことが多い。源泉徴収などで今までに納めた税金が納め過ぎだった場合、確定申告によって納め過ぎた税金が戻ることもあるので、確定申告を忘れないようにしよう。


Q


給与所得者でも確定申告は必要?

通常、給与所得者は確定申告が不要なイメージがあるが、確定申告が必要なケースもある。給与所得がある人は確定申告の代わりに会社で「年末調整」をするため、基本的には確定申告をすることはない。しかし「医療費控除」や「寄付金控除」などがある場合や、副業である程度の額以上を稼いだ場合などは確定申告が必要になる。

通常、給与所得者は確定申告が不要なイメージがあるが、確定申告が必要なケースもある。給与所得がある人は確定申告の代わりに会社で「年末調整」をするため、基本的には確定申告をすることはない。しかし「医療費控除」や「寄付金控除」などがある場合や、副業である程度の額以上を稼いだ場合などは確定申告が必要になる。


Q


確定申告にも基礎控除は関係あるのか?

基礎控除は納税者全員に対して一律に適用されるので、確定申告の際にもかかわってくる。給与所得控除はサラリーマンなどへの控除なので、フリーランス・個人事業主には基本的には関係がない。

基礎控除は納税者全員に対して一律に適用されるので、確定申告の際にもかかわってくる。給与所得控除はサラリーマンなどへの控除なので、フリーランス・個人事業主には基本的には関係がない。


基礎控除とはなんのこと?

「控除」とは、「金額から一定の金額を差し引くこと」という意味だ。「基礎控除」は基本的に誰にでも適用されるものである。

所得税や住民税を計算する際は、それぞれの所得額に応じて税金が決まる。基礎控除とは、この際に納税者の所得額から差し引けるものである。控除をした分については所得額に含めずに計算するため、控除額が多いとその分実際の所得よりも金額を減らせる。その結果、所得税や住民税を少なくすることができるのだ。

基礎控除は所得控除の1つ

基礎控除とは所得控除の種類の1つだ。所得控除は全部で14種類あり、原則として納税者の事情に合わせて適用できるかどうかが変わる。適用される場合でも、控除額はケースによって異なる。所得控除には「配偶者控除」「扶養控除」「医療費控除」などがある。

基礎控除は2019年までは「誰でも一定額控除」だった

基礎控除とは、2019年までは「誰でも条件がなく一定額の控除」だった。しかし今まで以上に国民一人ひとりの暮らしに合った制度にするために、変更されたのである。

所得控除とはどんな制度?

所得控除とは具体的にどのような制度なのかも確認していこう。

要件に当てはまれば所得税や住民税から一定額を引ける制度

所得控除とは「要件に当てはまれば所得税や住民税から一定額を引ける制度」のことである。所得控除は14種類あり、「扶養控除」や「医療費控除」などが有名だ。

所得控除ができる例

例えば、「扶養控除」とは、子どもや親など養う家族がいる場合に差し引ける所得控除だ。子どもなどがいる場合は、いない場合に比べて同じ所得でも生活に必要な金額が多くなりやすい。扶養控除として税金を減額することで、その差を少なくしているのである。

医療費控除も同様だ。医療費がかかる人は、医療費がかからない元気な人に比べて医療費の負担が大きくなってしまうため、その分を減額するというものである。

このように、それぞれの事情に合わせて所得控除が適用され、税金を納めるようになっている。

2020年1月1日から基礎控除に関する改正が実施

2020年1月1日から、基礎控除に関する改正が実施された。改正の詳細を見ていこう。

2018年度の税制改正によって決定

今回の改正は2018年度に行われた税制改正によって決定された。この改正は基礎控除だけではなく、給与控除も変更されている。

働き方改革やフリーランスの増加などに関連

近年働き方改革が叫ばれ、さらにフリーランスが増加傾向にある。働き方の多様化に関連して、それぞれの暮らしに対応するために税制改正が行われた。

本来、基礎控除は給与所得者も個人事業主も同じだったが、給与所得者はさらに「給与所得控除」があった。そのため給与所得者のほうが、控除額が大きかったのである。

今回の改正により、一般的な給与所得者の控除額は変わらず、個人事業主に対しては減税効果がある。変更内容を詳しく見ていこう。

2020年以降:所得が2400万円以下の場合の基礎控除

基礎控除はすべての人に同じ額を適用していたが、2020年以降は所得が2400万円以下とそれ以上とで控除額が変更された。2020年以降に確定申告する場合で、所得が2400万円以下のケースを紹介する。

所得が2400万円以下の場合、もともと一律38万円の控除額だったが、2020年以降は所得税の控除は10万円増え、48万円を基礎控除として差し引けるようになった。

なお基礎控除には住民税の控除もある。改正前は一律33万円だったが、2020年以降は所得が2400万円以下であれば43万円の控除額となっている。

このように、所得が2400万円以下の人に対しては控除額が増額されたため、この層にとっては減税効果がある変更と言える。

2020年以降:所得が2400万円を超える場合の基礎控除

2020年以降に確定申告し、所得が2400万円を超えるケースの基礎控除も紹介する。

2400万円より多く2450万円以下なら

所得が2400万円より多く2450万円以下の場合、所得税の基礎控除は32万円で、住民税の基礎控除は29万円となっている。改正前は所得税の基礎控除が一律38万円で、住民税の基礎控除が一律で33万円だったため、所得税の控除額も住民税の控除額も少しずつ減額したこととなる。

2450万円より多く2500万円以下なら

所得が2450万円よりも多く2500万円以下の場合、所得税への基礎控除はさらに減額されて16万円で、住民税の基礎控除は15万円である。改正前の所得税の基礎控除38万円が16万円に、住民税の基礎控除33万円が15万円になっており、所得が2400万円より多く2450万円以下の場合よりもさらに大きく減額されたということとなる。

2500万円より多い場合

所得額が2500万円よりも多い場合、住民税も所得税も基礎控除額は0円になる。2500万円を超えると、基礎控除による控除は適用されないと認識しておこう。

年収850万円よりも多いケースなら実質的な税負担増と言われる理由

基礎控除の改正点を考えた場合、変更されているポイントとなる金額は所得が2400万円よりも多いケースである。しかし2020年以降の変更に対して「年収が850万円よりも多ければ実質的な税負担増」と言われることがある。その理由を確認していこう。

年収850万円よりも多いケースの基礎控除

2020年以降、2400万円以下の所得の人は、所得税の基礎控除が以前よりも10万円増え、48万円を基礎控除で差し引けるようになった。年収850万円も2400万円以下の所得に含まれるため、基礎控除だけで見ると控除できる金額が増えることになる。

年収850万円よりも多いケースの給与所得控除

では、なぜ「実質的な税負担増」と言われるのだろうか。これは、基礎控除だけではなく給与所得の控除も変更になったためである。

年収850万円以下のケースでは、給与所得の控除額は10万円ずつ減るが基礎控除額が10万円増えるため、全体での控除額の変更はない。

しかし年収850万円より多いと、給与所得の控除が195万円に一律で固定されることになった。もともと定められていた控除額よりも10万円以上少なくなるため、所得として計算される額が増えて実質的には税負担が増えることになる。

個人事業主やフリーランスであれば、「年収850万円」というボーダーラインは関係ないが、給与所得者は税負担が増えるというわけである。

個人事業主などは所得が2400万円を超えると税負担増

年収850万円を超えるかどうかが判断の境目となるのは、給与所得がある場合に限られる。フリーランスや個人事業主などは給与所得控除がないため、所得が2400万円を超えるかどうかがポイントとなる。この場合、所得が2400万円を超えると税の負担が増えてしまう。

個人事業主などは2400万円以下なら税負担減

個人事業主やフリーランスの場合、所得が2400万円以下なら税負担は実質的に減ることとなる。目安の2400万円は売り上げではなく所得の額なので、「売り上げは多いが経費としてかかっている金額も多い」という場合には当てはまらない。そのため、個人事業主やフリーランスにとっては、ほとんどの人の税負担が実質的に減るだろう。

確定申告の際には基礎控除以外の控除も忘れずに

前述のとおり、基礎控除は14種類ある所得控除の1つである。ほかにも「医療費控除」や「扶養控除」など、多くの人が対象となるさまざまな控除があるため、確定申告の際には基礎控除以外の控除も忘れずに申請しよう。

今年の確定申告は基礎控除の変更に注意しよう

2020年以降は基礎控除の額が変わる。この額が変わると、所得税や住民税として支払う金額も変わるため、知らずにいると「なぜ所得税や住民税が増えたor減ったのだろう」と不思議に思うこともあるだろう。今年の確定申告では基礎控除額が変更になったことに注意しておこう。