マイナンバーの記載拒否はできるのか、罰則はあるのか
マル扶には、本人だけでなく家族のマイナンバーも記載することになる。マイナンバ-の記載は拒否できるのだろうか。また、拒否した場合の罰則はあるのだろうか。
結論としては、従業員が事業主にマイナンバー情報を提供しないことは可能で、拒否しても罰則はない。しかし内閣官房は事業主に向け、従業員からマイナンバーの通知を拒否された場合に「社会保障や税の決められた書類にマイナンバーを記載することは、法令で定められた義務であることを周知し、提供を求めてください」としており、国税庁も「個人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることを伝え、提供を求めてください。それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください」と呼びかけている。
マイナンバーを記載しないメリット・デメリット
所得税法施行規則も、従業員が事業主に提出するマル扶や、事業主が発行する源泉徴収票にはマイナンバーを記載するものとしている。記載は実質的に義務であり、今後は罰則の新設なども考えられる。
マイナンバーを記載しないことで個人情報漏えいのリスクを下げられると考えられるが、万が一の場合でも芋づる式に個人情報が漏えいしないよう、情報は共通のデータベースに集約せず各機関にて分散管理するようだ。事業主も従業員のマイナンバー管理を怠ると罰則を受ける恐れがあり、従業員や委託企業の管理体制を整える必要がある。一応、マイナンバーを記載しないことのメリットはあまりないと考えられる。
マイナンバーを提供することによって、家族の所得等の情報が今まで以上に税務署に捕捉される。所得が一定以上の人を故意や過失で扶養家族に入れていた場合等、所得税の追徴と利息分として延滞税が課されることもありうるので注意しよう。
ニュースで聞いていただけのマイナンバーも、提出書類に記載が必要となると一気に身近に思えてくる。今後は様々な場面で求められることも出てくるだろう。現状では情報不提供の罰則はないものの、今後創設される可能性はある。
マイナンバーの是非については利便性向上や国・事業主の情報管理体制整備状態で判断されることになる。求められた情報をただ提供するだけではなく、その是非についても自身で評価していく姿勢が必要だろう。
新井 良平 経理ライター
中小企業から上場企業まで規模を問わず経理や税務を経験。日々の経理処理から開示業務、IFRS、内部統制、経営分析、税務申告、移転価格など幅広い経験を基に複数メディアで記事を執筆。