会社で年末調整を行う場合、扶養控除対象者を書類に記入して提出すれば、所得控除を受けられる。しかし、さまざまな理由により確定申告する必要がある場合は、自分できちんと手続きをしなければならない。この記事では、扶養控除対象者の要件や申告書の書き方を解説する。

扶養控除に関するQ&A

確定申告,扶養控除
(画像=PIXTA)
Q


扶養控除とは?

家族や親族に一定の要件を満たす人がいる場合、一定金額の所得控除を受けられることを「扶養控除」という。所得控除を適用した後の所得に税率をかけて所得税や住民税を算出するため、納税額に大きく影響する可能性がある。

家族や親族に一定の要件を満たす人がいる場合、一定金額の所得控除を受けられることを「扶養控除」という。所得控除を適用した後の所得に税率をかけて所得税や住民税を算出するため、納税額に大きく影響する可能性がある。


Q


扶養控除に該当する条件は?

扶養控除対象者の主な条件は、「その年の12月31日時点で16歳以上であること」「納税者と生計を一にしていること」「年間の合計所得金額が48万円以下(給与以外の所得がない場合は年収103万円以下)であること」の3つである。

扶養控除対象者の主な条件は、「その年の12月31日時点で16歳以上であること」「納税者と生計を一にしていること」「年間の合計所得金額が48万円以下(給与以外の所得がない場合は年収103万円以下)であること」の3つである。


Q


年齢別の扶養控除額を教えて!

控除額は、一般の控除対象扶養親族(16歳以上)は38万円、19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」は63万円、70歳以上の老人扶養親族のうち納税者と同居している場合は58万円、同居していない場合は48万円となっている。

控除額は、一般の控除対象扶養親族(16歳以上)は38万円、19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」は63万円、70歳以上の老人扶養親族のうち納税者と同居している場合は58万円、同居していない場合は48万円となっている。

扶養控除対象者の要件

扶養控除とは、家族や親族に一定の要件を満たす人がいる場合に、所得控除を受けられる制度である。扶養控除の対象となる人のことを「控除対象扶養親族」という。どのような人が控除対象扶養親族となれるのかを解説する。

●配偶者以外の16歳以上の親族

控除対象扶養親族は、配偶者を除く、6親等内の血族及び3親等内の姻族でなければならない。都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や、市町村長から養護を委託された老人も、控除対象扶養親族となり得る。

その年の12月31日時点で16歳以上であることも、控除対象扶養親族の要件である。

●納税者と生計を一にしている

控除対象扶養親族は、控除を受ける納税者と生計を一にしていなければならない。独立して生活できる収入があってはならず、納税者に金銭面でのサポートを受けている必要がある。

ただし、「生計を一にしている」という状態は、必ずしも納税者との同居を条件とするものではない。例えば、仕事・修学・療養などを理由に別居している場合でも、生活費・学資金・療養費を常に送金していたり、余暇には一緒に過ごすことを常例としていたりするなら、生計を一にしているものとして扱われる。

逆に、たとえ納税者と一緒の家屋に居住している場合でも、互いに独立して生計を立てていることが明らかな場合は、生計を一にしているとはみなされない。

●年間の合計所得金額が48万円以下

控除対象扶養親族は、年間所得の合計金額が48万円以下(2019年分以前は38万円以下)でなければならない。

例えば、年金収入のみの親を扶養に入れたい場合は、受給年金額から控除分を差し引いた雑所得額が対象となる。65歳未満なら108万円以下、65歳以上であれば158万円以下で、控除対象扶養親族にできる。

以前は38万円以下が条件であったが、所得税の見直しが行われたことで、基礎控除額が38万円から48万円に引き上げられたことに伴い、扶養控除を受ける所得要件も2020年分から10万円引き上げられている。

アルバイトやパートなど給与所得があるケースで、給与以外の所得がない場合は、年収103万円以下であることが要件となる。

●その他の要件

青色申告者の事業専従者として給料をもらっている人や、白色申告者の事業専従者である人は、扶養親族の対象にはなれない。

納税者が個人事業主などのケースで、いわゆる「家族従業員」として仕事をしている人が該当する。家族や親族への給料は利益操作しやすく、税金を不当に安くしようとすることを防ぐ意味がある。

年齢別の扶養控除額

控除対象扶養親族の年齢により、扶養控除の金額は異なる。年齢別の控除額を確認しておこう。

●15歳以下

以前は、15歳以下でも適用されていた。しかし、「所得控除から手当へ」などの観点から、子ども手当の創設と相まって、15歳以下の「年少扶養親族」に対する38万円の扶養控除は廃止されている。

所得税の扶養控除は2011年から、住民税の扶養控除は2012年度から、年少扶養親族の廃止が適用されている。なお、16~18歳までの特定扶養親族に対する、25万円の扶養控除の上乗せ分も、高校の実質無償化に伴い、同時期に廃止となっている。

●16歳以上

控除対象扶養親族の要件は、その年の12月31日時点で16歳以上であることとされている。次項以降で解説する「19歳以上23歳未満」と「70歳以上」の扶養親族を除いた、一般の控除対象扶養親族の控除額は38万円である。

●19歳以上23歳未満

控除対象扶養親族のうち、その年の12月31日時点での年齢が19歳以上23歳未満の人を「特定扶養親族」という。特定扶養親族がいる場合の控除額は63万円である。大学生や専門学校生を子に持つ親への負担を軽くする制度と言えるだろう。

かつては16歳以上23歳未満が控除額63万円の特定扶養親族だったが、前述したように16~18歳までの扶養親族は、25万円の上乗せ分の適用が廃止されている。これに伴い、特定扶養親族の範囲も、19歳以上23歳未満に変更となっている。

●70歳以上

控除対象扶養親族のうち、70歳以上の人を「老人扶養親族」という。納税者と普段同居している老人扶養親族を「同居老親等」といい、控除額は58万円に設定されている。同居老親等以外の老人扶養親族は、控除額が48万円である。

70歳を超えると、病気治療のために長期入院を余儀なくされる人もいるだろう。結果的に入院期間が1年を超えるような場合でも、同居として認められる。ただし、老人ホームなどの施設で暮らしている場合は、同居とはみなされない。

扶養控除と似た控除

扶養控除以外にも、確定申告で受けられる控除がいくつかある。所得が38万円以上でも対象となったり、ほかの控除と併用できたりするものもあるため、該当する場合は忘れずに申告しよう。

●配偶者控除

配偶者は扶養控除を受けられない代わりに、所得が38万円以下であれば配偶者控除を受けられる。70歳以上の「老人控除対象配偶者」は、一般の配偶者に比べ控除額が高くなる。

  納税者の所得額  控除額
 一般の控除対象配偶者  老人控除対象配偶者
 900万円以下  38万円  48万円
 900万円超950万円以下  26万円  32万円
 950万円超1000万円以下  13万円  16万円

配偶者の所得が38万円を超えていても、一定の要件を満たせば、所得金額に応じて一定金額の所得控除を受けられる「配偶者特別控除」を適用できる。

●勤労学生控除

働きながら学校に通っている納税者は、一定の条件を満たすことで、控除額27万円の「勤労学生控除」を受けられる。勤労による所得があること、合計所得金額が65万円以下であること、特定の学校に通っていることなどの条件を満たさなければならない。

●障害者控除

納税者・同一生計の配偶者・扶養親族が障害者に該当する場合、障害者控除を受けられる。16歳未満の扶養親族も対象となるうえ、扶養控除や配偶者控除との併用も可能だ。

控除額27万円の「障害者」、40万円の「特別障害者」、75万円の「同居特別障害者」に区分される。

確定申告書の扶養控除の書き方

会社で年末調整してもらえる場合は、扶養控除に関する確定申告の必要はない。しかし、中途退職後に再就職する予定がある人や、複数の会社から給料をもらっている人は、扶養控除を受けるために確定申告を求められる。

●確定申告書の具体的な書き方

確定申告書の様式には、主に会社員などの給与所得者が使う「確定申告書A」と、主に個人事業主などが青色・白色申告で使う「確定申告書B」の2種類がある。どちらにも扶養控除に関する欄があり、書き方の違いはほとんどない。

確定申告書AとBのそれぞれは、第一表と第二表で構成されている。第一表の左側にある「所得から差し引かれる金額」の「扶養控除」欄には、扶養控除の合計額を記入する。

第二表には、「所得から差し引かれる金額に関する事項」の項目内に、控除対象扶養親族の詳しい情報を記入する欄がある。氏名・続柄・生年月日・控除額・個人番号(マイナンバー)を記入しよう。

なお、第二表には、16歳未満の扶養親族を記入する欄もある。16歳未満の扶養親族は、所得税・住民税の控除対象とならないため、記入の必要はないと考える人も多いだろう。しかし、住民税の均等割と所得割の非課税基準額を算定するために必要なので、該当する扶養親族がいる場合、きちんと記入しよう。

●必要書類

控除対象扶養親族が全員国内に住んでいる場合、添付書類は不要である。確定申告書に必要事項を記入するだけでよく、障害者や高齢者の場合も書類を添付する必要はない。

ただし、扶養親族が海外に居住している場合は、戸籍謄本・住民票・パスポートなどの親族関係書類と、納税者が援助のために送金していることを証明する書類が必要である。添付書類が外国語で書かれている場合は、翻訳文も添付しなければならない。

●誤りを修正したい場合

申告書の修正方法は、修正するタイミングや修正内容により、訂正・更生・修正の3種類に分けられる。

申告期限内に修正する場合は、「訂正申告」を行う。正しく記入した確定申告書を再度作成し、1枚目に「訂正申告」と記入する。訂正前の申告書の提出年月日と誤った申告税額をわかりやすいように記入して提出すればよい。

申告期限後に、還付金を少なく申告したことに気づいた場合は、管轄税務署へ「更生の請求」を行う必要がある。5年度分までさかのぼって請求できる。税金の払い過ぎにペナルティーは科されないが、更生の請求に虚偽が発覚した場合は罰則を受けることになる。

期限後に還付金を多く申告した場合は、「修正申告」を行う必要がある。5年度分までさかのぼって申告できるが、税務署の調査を受ける前に自主申告すれば、延滞税はかかるものの過少申告加算税は課されない。できるだけ早く申告しよう。

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