確定申告で医療費控除を申請する場合は、e-Taxを利用してみよう。自宅にいながら24時間いつでも申請できる上、領収書など添付書類の提出を省略することも可能である。e-Taxの概要やメリット・デメリット、具体的な手続き方法を紹介する。

e-Taxと医療費控除に関わるQ&A

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(画像=PIXTA)
Q


医療費控除とは?

1年間に負担した自分や家族の医療費が一定額を超えた場合に、所得控除を受けられる制度が医療費控除である。所得が200万を超え、年間の医療費が10万円以上なら、控除の対象になる。

1年間に負担した自分や家族の医療費が一定額を超えた場合に、所得控除を受けられる制度が医療費控除である。所得が200万を超え、年間の医療費が10万円以上なら、控除の対象になる。


Q


e-Taxとは?

確定申告・法定調書の作成や送信・電子納税などを、インターネット経由で行えるシステムである。手続き方法には、マイナンバーカードとICカードリーダーライターを利用する方式と、ID・パスワードのみで行える方式の2種類がある。

確定申告・法定調書の作成や送信・電子納税などを、インターネット経由で行えるシステムである。手続き方法には、マイナンバーカードとICカードリーダーライターを利用する方式と、ID・パスワードのみで行える方式の2種類がある。


Q


e-Taxで医療費控除を申請するメリットとデメリットは?

医療費控除をe-Taxで申請すれば、各種計算におけるミスを防げるほか、領収書などの添付書類の提出を省略できる。医療費控除を申請する上でのデメリットは特にないため、積極的にe-Taxを利用するとよいだろう。

医療費控除をe-Taxで申請すれば、各種計算におけるミスを防げるほか、領収書などの添付書類の提出を省略できる。医療費控除を申請する上でのデメリットは特にないため、積極的にe-Taxを利用するとよいだろう。

医療費控除の基礎知識

●医療費控除とは

自分や家族のために支払った医療費が高額になった場合、医療費などから計算した金額を所得金額から差し引けることを医療費控除という。

医療費控除を受けるためには以下の条件を満たさなければならない。

・納税者が、自分や自分と生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費であること
・その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること

所得金額から差し引ける医療費控除の金額は、以下の計算式で算出される。医療費控除の上限額は200万円である。

・(実際に支払った医療費の合計金額-保険金などで補てんされる金額)-10万円

「保険金などで補てんされる金額」は、医療保険の入院・手術給付金や、健康保険の出産育児一時金・高額療養費・家族療養費からの支給金の額を指す。また、その年の総所得金額が200万円未満なら、10万円ではなく総所得金額の5%を最後に差し引く。

その年の総所得金額が200万円以上あり、実質的な医療費負担の合計が10万円以上であれば、医療費控除を受けられる。

●対象となる医療費

医療費控除の対象となる主な医療費は以下のとおりである。

・医師または歯科医師による診療や治療の費用
・治療または療養に必要な医薬品の購入費
・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師による施術費
・保健師・看護師・准看護師などによる療養上の世話代
・助産師による分べんの介助費
・介護福祉士等による一定の喀痰吸引や経管栄養の費用
・介護保険などの制度で提供された一定の施設や居宅サービスの自己負担額
・診療を受けるための通院費、医師の送迎費、入院の部屋代や食事代、コルセットなどの医療用器具の購入代
・診療や治療を受けるために直接必要な、義手・義足・松葉杖・補聴器・義歯・眼鏡などの購入費
・視力回復レーザー手術(レーシック手術)の費用
・オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)の費用
・海外旅行先で支払った医療費

対象とならない主な医療費も確認しておこう。

・人間ドックや健康診断の費用
・メタボリックシンドロームに係る特定健康診査の費用
・日常生活に必要な眼鏡の購入費

●申請に必要な書類

医療費控除を受けるには、確定申告しなければならない。年末調整では申請できないため、給与所得者であっても控除を受けたければ確定申告が必須である。

2017年分以後の確定申告書を提出する場合は、医療費の領収書を基に「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付する。

2017年から2019年分までの確定申告に関しては、明細書ではなく領収書を添付するか、提出の際に領収書を提示する方法でも申請できる。

医療保険者から発行された医療費通知がある場合は、医療費通知を添付すれば医療費控除の明細書は不要である。

なお、2016年分以前の確定申告書を提出する場合は、医療費の領収書を添付または提示しなければならない。

●セルフメディケーション税制との重複適用は不可

セルフメディケーション税制とは、健康維持や疾病予防に関する一定の取り組みを行っている人が、指定された医薬品を自分や家族のために購入した場合、一定金額の所得控除を受けられる制度である。

セルフメディケーション税制の対象となる商品には、購入の際の領収書などに対象商品である旨が示されている。一部の商品には、対象商品であることを示す識別マークが掲載されている。

年間の購入費における1万2,000円を超えた部分の金額が、控除額として所得から差し引かれる。控除限度額は8万8,000円と定められている。

一般的に医療費が10万円を超えなければ利用できない医療費控除と違い、少額の負担でも利用できることが、セルフメディケーション税制のメリットである。

適用を受ける場合は、商品を1万2,000円以上購入した年に、予防接種・定期健康診断・特定健康診査など、健康維持や疾病予防に関する一定の取り組みを行っていなければならない。確定申告の際は、それらの取り組みを証明する書類も必要である。

セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例と位置付けられているため、医療費控除との重複適用はできない。

e-Taxとは

●インターネットで確定申告できるシステムのこと

e-Tax(国税電子申告・納税システム)とは、所得税・消費税・贈与税などの確定申告や、法定調書の提出・届出・申請など各種手続きを、インターネットを利用して行えるシステムである。

また、国税の納付手続きをインターネット経由で行う「電子納税」もe-Taxで行うことが可能である。

以前までは、e-Taxでの申請に、IDとパスワード・マイナンバーカード・ICカードリーダーライターを自宅に用意しておく必要があったため、利用を敬遠する人も多かった。しかし、2019年からは、IDとパスワードのみ事前に準備しておけば申請できるようになっている。

●e-Taxのメリット

確定申告の時期に税務署や特設会場へ足を運ばなくても、自宅からインターネット経由で24時間いつでも申告できることが、e-Taxの最も大きなメリットだ。

また、青色申告者が2020年度以降にe-Taxを利用すると、控除額が10万円アップする。2020年分の確定申告以降は、青色申告特別控除額が従来の65万円から55万円に減額されるが、e-Taxを利用することでこれまでと同じ額の控除を受けられる。

ほかにも、申請から還付までの期間を短くできることや、自動計算機能により計算ミスを防げることなど、e-Taxを利用すると多くのメリットを享受できる。

●e-Taxのデメリット

一般的な確定申告と異なり、事前準備を必要とすることが、e-Taxのデメリットとして挙げられる。

既述のとおり、現在はIDとパスワードのみ事前に準備しておけば、自宅で確定申告できる。しかし、IDとパスワードは税務署でしか発行してもらえないため、この方式を利用する場合は1度は税務署に足を運ぶ必要がある。

IDとパスワードを発行できる税務署は、管轄の税務署に限らない。本人確認書類を持参すれば、どの税務署でも発行してもらえる。

e-Taxで医療費控除を申請しよう

●e-Taxなら手続きが楽

医療費控除をe-Taxで申請すれば、医療費の領収書に加え、セルフメディケーション税制の医薬品購入の領収書・一定の取り組みを明らかにする書類の提出を省略できる。

これらの書類に記載されている情報を入力するだけで済むため、手続きにおける手間を軽減できるだろう。ただし、領収書は5年間の保管が必要である。

国も確定申告におけるe-Taxの利用を推奨しており、今後もさまざまな優遇策が生まれることが予想されるため、早めにe-Taxの使い方に慣れておくことをおすすめする。

●具体的な申請方法

【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)にアクセスする
・「個人の方」→「確定申告書の作成はこちら」→「作成開始」と進む
・「e-Taxで提出する」→「ID・パスワード方式により提出する」と進む
・IDとパスワードを入力し「次へ」をクリック
・「申請書を作成する」→該当年度分の「申請書等作成メニュー」をクリック
・「所得税」を選択し、必要な情報を入力
・医療費控除に関する情報を入力
・医療費控除の「入力する」をクリックし、医療費の詳細を入力
・「医療費控除を適用する」を選択
・入力方法を選択し、「次へ進む」をクリック
・還付金額を確認し、還付受取方法を入力
・作成した内容を確認の上、パスワードを入力し、「送信する」をクリック

●健康増進支援サービス「PepUp」を活用しよう

PepUpとは、健康に関するさまざまな情報を取り扱うポータルサイトである。

PepUpでは、自分の健康診断結果や医療費の明細を確認できるサービスが用意されており、e-Taxで医療費控除申請をする場合に使用可能なデータをダウンロードできる。

PepUp上での「国税電子申告(e-Tax)用データのダウンロード」にてダウンロードしたxmlデータを、e-Taxでの確定申告時に使用すれば、医療費通知を入力する手間が省略できる。

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